コロナ禍における「100兆円の国債発行と日銀による事実上の全額買い取り」という超強力なマクロ経済政策が、現在の日本経済を「高圧経済」の状態に押し上げた主因であるということは、非常に有力かつ極めて妥当性の高い見方です。
当時の大規模な財政・金融空間の創出が、どのようにして現在の高圧経済(需要が供給を上回り、賃金と物価がポジティブに連動する状態)をもたらしたのか、そのメカニズムを整理します。
1.高圧経済(High-Pressure Economy)を生み出したルート
コロナ禍の「100兆円」は、まさに日本経済を「高圧経済」に叩き込むためのエネルギーとなりました。
- 供給力の破壊(資本の毀損)を防いだ:もしあの時、100兆円の補正予算と日銀の買い支えがなければ、数万~数十万の企業が倒産し、膨大な失業者が生まれ、日本経済の「供給力(潜在GDP )」そのものが修復不可能なレベルで破壊されていたはずです。雇用と企業を維持したからこそ、次のステップへ進めました。
- 「デフレマインド」の不可逆的な転換:貨幣数量説が示す通り、市場に滞留した巨額のマネー(M)と、その後の世界的なサプライチェーンの混乱・資源高という外生的ショックが掛け合わさったことで、四半世紀にわたって日本経済を縛り付けていた「物価も賃金も上がらないのが当たり前」というデフレの均衡が文字通り破られました。
2.労働市場のタイト化と構造的賃上げへのシフト
高圧経済の最大の果実は、「人手不足が企業に賃上げと投資を強制する」というメカニズムが回ることです。
現在の日本経済のデータを見ても、この傾向は顕著に現れています。
- 春闘の賃上げ率:30数年ぶりの高水準を維持。
- 失業率:完全雇用状態(2%台前半~半ば)を維持し、求人倍率も高水準。
企業はもはや「安い給料で人を買い叩く」ことができなくなり、生き残るために「賃金を上げて人を集める」か、「ITや省力化設備に投資して生産性を上げる」かの二者択一を迫られています。これこそが髙橋洋一先生をはじめとするリフレ派が長年マクロ経済政策を通じて実現したかった「低失業率・人手不足による構造改革」の局面そのものです。