この相互変換のモヤモヤは、「1年後の着地点(将来価値 \(FV\))がピッタリ同じになるように、2つの違う乗り物のスピードを等号(\(=\))で結んでいるだけ」と捉えると一瞬で解消します。
数式の天下りではなく、「1年後に手に入る金額が同じになるルール」として解き明かします。
1. 舞台設定:1年後に同じゴールに着くレース
元本 1円 を預けて、1年後に増えるレースを考えます。
- 乗り物A(離散・年1回複利 \(r_1\)):1年間じーっと利息がつかず、1年目の最後にドカンと利息 \(r_1\) がつく。
\[\text{1年後のゴール金額} = 1 + r_1\] - 乗り物B(連続複利 \(r_c\)):一瞬の休みもなく、分子レベルの極限で利息が元本に組み入れられ続ける。極限の定義により、1年後の増殖率は \(e^{r_c}\) になる。
\[\text{1年後のゴール金額} = e^{r_c}\]
2. 「相互変換」の正体は、ただのイコール
「この2つの運用方法が『等価(同じ価値)』である」とは、1年後の着地点が完全に一致するということです。
\[1 + r_1 = e^{r_c}\]
相互変換の公式とは、この左右を入れ替えて解いただけのものです。
① 連続複利 \(r_c\) から、離散複利 \(r_1\) を知りたいとき
「\(r_c\) のスピードで連続運用した結果、年1回複利だと年利何%に相当する?」
\[r_1 = e^{r_c} – 1\]
② 離散複利 \(r_1\) から、連続複利 \(r_c\) を知りたいとき
「年1回 \(r_1\) の成果を、休みなく増え続ける連続複利のスピードで表すと何%?」
両辺に自然対数 \(\ln\) をかぶせると、\(e\) と \(\ln\)は打ち消し合う(逆関数の関係)ので、右辺の肩から \(r_c\) が降りてきます。
\[\ln(1 + r_1) = \ln(e^{r_c}) \Rightarrow r_c = \ln(1 + r_1)\]
3. 具体例:なぜ \(r_c\) は \(r_1\) より小さくなるのか?
具体的な数字を当てはめると、感覚が完全に腑に落ちます。
「年1回複利で 5%(\(r_1 = 0.05\))の成果を、連続複利 \(r_c\) で達成するには、何%のペースで走ればいいか?」
HP 12c で叩いてみます。
/* r_c = ln(1 + 0.05) = ln(1.05) */
1.05 g LN -> 【 0.04879 】 (約 4.88%)
- 年1回複利のスピード:5.00%
- 連続複利のスピード:4.88%
なぜ連続複利のほうが数字が小さくて済むのでしょうか?
「連続複利は、つねに利息が利息を生むフル回転(超高頻度再投資)をしているため、低めのペース(4.88%)で走っていても、年1回しか利息がつかないのんびり屋の 5.00% に追いついてしまうから」です。
逆に、連続複利 4.88% の着地点を元に戻すと:
0.04879 g e^x -> 【 1.0500 】 (きれいに 1 + 0.05 に戻る)
スッキリ整理
- 基本の約束事:
\[1 + r_1 = e^{r_c}\](「1年放置して最後に利息をもらう」のも「一瞬の隙もなく連続再投資する」のも、1年後の財布の中身は同じ) - 対数 \(\ln\)の役割:右肩に乗っかっている連続スピード \(r_c\) を地上に降ろすためのハシゴ。
- 電卓での直感:
1 + r1にg LNを押せば「連続のスピード \(r_c\)」になり、その \(r_c\) にg e^xを押せば「離散の倍率 \(1+r_1\)」に戻る。
数学的な難解な変換ではなく、「同じゴール金額(\(FV\))を共有している2つの表記の看板の掛け替え」に過ぎません。