第2章の段落部分「量的緩和が通貨発行益で物価を押し上げるしくみ」に入る前に、私たちは、非常識にも上記の財政法ただし書きを、「禁じ手」と誤解している。「国債の日銀引き受け」は、通常、『日本銀行が紙幣を発行すると、その分だけ通貨発行益になる。それを政府の税外収入(国庫納付金)にして、政府支出に姿を変えて国民に移転する一つの手法が「日銀引き受け」』なのだ。これが「禁じ手」だとしたら、だれが得することになろうか? まさか、政府か日銀が、私たち国民の経済向上に使わないとしたら、江戸時代の農民一揆の騒ぎどころじゃない! 非常識にも甚だしい。
お金の量が増えるわけだから、でたらめに引き受けを増やせばもちろんインフレになるが、現行法ではそうはならない。日銀は毎年、償還期限が到来したものについて国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借り換えのための国債の引き受けをしている。
要は償還分だけを財務省が日銀に対して現金で支払うのだが、そのお金は市場から用立てられていて、日銀引き受け分の国債が償還されると、市場のマネーがその分減るから、そのままにしておくとデフレになる。だからその借り換え分だけ日銀が国債を引き受けをして紙幣を増刷してもインフレにはならず、やっと相殺される程度だ。したがって現行の枠組みにおける日銀の国債引き受けはよく批判される「禁じ手」でも「麻薬」でもない。