カテゴリー: 今、考えていること
第7回『HP12cによるときめきひらめき金融数学』設例20~22(単利法)
第6回設例13~19読解デモ版
第5回『HP12cによるときめきひらめき金融数学』設例9~12読解デモ版
第4回『HP12cによるときめきひらめき金融数学』設例7~8読解デモ版
第3回『HP12cによるときめきひらめき金融数学』設例6読解デモ版
第2回「第2版の序」の大切な部分
第1回『HP12cによるときめきひらめき金融数学』解読デモ版
私がHP12cと出会ったのは木村弘之亮先生の『ときめきひらめき金融数学』
『HP12cによるときめきひらめき金融数学』木村弘之亮先生の著書との出会いが、私をHP12cに誘い出してくれたキッカケでした。
この15年前の書籍をもう一度、読み込むことが大事だと思うので、今年の記録的な暑い夏に滋養を蓄えるのに打ってつけです。
この8月は、一か月間を通して集中ゼミを自分自身に課したいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
木村先生がこのご本で「金融リテラシー」と叫ばれたのは、まさに年金二重課税問題をクローズアップさせ、「金融界や行政が仕掛ける数字のトリックを見抜く護身術を持て」という意味だったのだと、私は改めて気づきました。
金融実務やマーケティングで昔からよく使われる、いわゆる「現在価値(PV)と割引率(i)のレバー(てこ)効果」を利用した数値演出の手口そのものです。
金融数学の原理(HP 12cのTVMロジック)で言えば、キャッシュフロー(\(PMT = 230\)万円 × 10回 = 2,300万円)が固定されている以上、方程式は以下の単純なトレードオフ(逆比例の関係)になります。
毎年230万円(\(PMT\))を10年間受け取る構造を、割引率(\(i\))を使って現在価値(\(PV\))に引き戻す正しい式は、各年の現在価値の「足し算」になります。
\(PV = PMT + \frac{PMT}{(1+i)^1} + \frac{PMT}{(1+i)^2} + \dots + \frac{PMT}{(1+i)^9}\)
これをまとめると、HP 12c の内部で解いている標準的な期首払い年金の公式になります。
\(PV = PMT \times \left( \frac{1 – (1+i)^{-10}}{i} \right) \times (1+i)\)
「受取総額(2,300万円)というゴールデンライン(名目和)が決まっているとき、\(PV\)(元本評価)と \(i\)(割引率)は反対方向に動く」 という関係です。
この仕組みを悪用したり、都合よく歪めたりする金融界の代表的な「手筋」には、以下のようなパターンがあります。
1. 「利回り」を高く見せて商品を売る手法(高利回り演出)
投資商品や変額保険、年金型商品のセールスでよく見られる手法です。
- 手口:顧客に見せる「初期投資額(実質的なPV)」を各種手数料や割引評価などで意図的に小さく見せかける。
- 効果:受取額(\(PMT\))が変わらなくても、元本(\(PV\))を小さく設定するだけで、計算上の内部収益率(IRR)は 13.70% のような「超高利回り」に跳ね上がります。
- 顧客の錯覚:「こんなに高い利回りで運用してくれる素晴らしい商品なんだ!」と誤認してしまいます。
2. 「安さ」を演出するローン・残価設定(アドオン金利・残価設定)
逆に、マイカーローンや住宅ローン、残価設定型ローン(残クレ)で顧客に借金させやすくする場面でも、このロジックが裏返して使われます。
- 手口:毎月の返済額(\(PMT\))を安く見せるために、将来の据置額(残価=\(FV\))を大きく設定したり、元本割引の計算ロジックをブラックボックス化する。
- 効果:一見すると月々の負担が軽く見えますが、HP 12cで実質年率(IRR)を叩くと、見た目の提示金利(アドオン率)を遥かに超える高金利で借りさせられていることが発覚します。
3. 国税庁が陥った(あるいは都合よく使った)罠
最高裁判所第3小法廷が平成22年7月6日に判決をくだし、第1審長崎地裁判決の年金二重課税問題で国税行政がやったことは、金融界の「高利回り演出」の裏返しでした。
- 相続税の段階:通達で「評価額(PV)は6割(1,380万円)でいいですよ」と親切な顔をする。
- 所得税の段階:「PVが1,380万円ということは、2,300万円との差額920万円は全部運用益(13.70%の超高利回り)ですね!雑所得としてたっぷり所得税をいただきます!」と回収する。
税務当局が意識的だったか無知だったかは別として、金融数学的には「元本評価(PV)を叩いて低く見せかけ、その反動で生じた巨大な利息(920万円)から大量の税金をむしり取る」という、金融詐欺にも似た構造的トラップになっていたわけです。
金融リテラシー(HP 12c)の防犯効果
金融商品のセールスや行政の試算で、「お得な評価」や「魅力的な数字」を提示されたとき、HP 12cに \(PV\), \(PMT\), \(n\) を入れて i を一発叩くだけで、「その数字を成立させるために、裏で何%の無理な利回りを前提にしているか」 が1秒で暴かれます。
まとめ
単純な掛け算 \(PV \times (1+i)^n\)ではなく、「毎年受け取る230万円を \(i\)で割り戻して合計したものが \(PV\)になる(=年金現価の和)」 というのが正しい数理構造です。
そして、「2,300万円という総枠の中で、\(PV\)(元本)の取り分を小さくすればするほど、残りの運用益とそれを支える利率 \(i\) が膨れ上がる」というシーソーの関係になっている。
NPVに加えて、「住宅ローンの繰り上げ返済」と「IRR(内部収益率)」の計算比較
どちらの例も、「数式や計算手順に惑わされず、ビジネスや人生の決断(シミュレーション)に思考を100%集中できる」というHP 12cの本質が際立つ場面です。
1. 住宅ローンの繰り上げ返済(毎月返済額の再計算)
「繰り上げ返済をしたとき、毎月の返済額がいくら減るか」を試算するケースです。
🔍 設定する計算モデル
- ローン残高: 3,000万円
- 残り期間: 20年(240ヶ月)
- 金利: 年1.5%(月利 = 1.5% \(\div\) 12 = 0.125%)
- ここで 500万円 を繰り上げ返済(残高 2,500万円 に減少)
- 求めるもの: 返済額が月いくら安くなるか?
普通の電卓の場合:元利均等返済の「あの複雑な公式」と格闘
元利均等返済の公式 \(PMT = P \times \frac{r(1+r)^n}{(1+r)^n – 1}\) を電卓で解く必要があります。
思考と操作の流れ:
1.00125の240乗を手計算・メモする。(乗算キーを240回叩くわけにはいかないので、メモリーや指数キーを駆使)- 繰り上げ前の「毎月返済額(約14.48万円)」を算出し、紙にメモする。
- 元金を2,500万円に変えて、全く同じ複雑な計算をもう一度行い、新しい返済額(約12.06万円)を算出して紙にメモする。
- 引き算をして「月約2.42万円浮く」と確認する。
脳の負担:
公式の入力ミスやカッコの閉じ忘れ、メモの間違いに神経をすり減らします。「返済額を減らすべきか、手元資金を残すべきか」という思考に辿り着く前に疲弊してしまいます。
HP 12cの場合:ローンの諸条件を「そのまま置く」だけ
HP 12cには、金融の5大要素(n:期間, i:金利, PV:現在価値, PMT:定期支払額, FV:将来価値)が独立したボタンとして用意されています。
思考と操作の流れ:
- 繰り上げ前の毎月返済額を出す:
240n(240ヶ月)1.5gi(年利1.5%を自動で月利変換)30000000PV(現在の借入額3,000万)PMT👉-144,785円(毎月の返済額)
- 500万円繰り上げ返済してみる(PVを書き換えるだけ):
25000000PV(残高を2,500万に変更)PMT👉-120,654円(新しい毎月の返済額)
- 差額を一瞬で確認:
- スタック操作で引くだけ 👉
24,131円の減額
- スタック操作で引くだけ 👉
HP 12cの思考:
金利や期間を設定したあと、「借入金額(PV)」の数字を入れ替えて
PMTボタンを押すだけです。「もし1000万返したら?」「金利が2%に上がったら?」という条件変更も、該当するキーを上書きして再実行するだけで、思考を止めずにシミュレーションできます。
2. IRR(内部収益率)の計算
IRRは「この投資事業は、実質的に年何%の利回りで回っているか?」を求める指標です。数式上は高次方程式になるため、手計算では解けず、試行錯誤(アプロキシメーション)が必要になります。
🔍 設定する計算モデル
- 初期投資: 1,000万円(マイナスキャッシュフロー)
- 1年目回収: 300万円
- 2年目回収: 400万円
- 3年目回収: 500万円
- 求めるもの: この投資の内部収益率(IRR)
普通の電卓の場合:実質「計算不可能」
IRRの公式:\(0 = -1000 + \frac{300}{(1+r)^1} + \frac{400}{(1+r)^2} + \frac{500}{(1+r)^3}\)
普通の電卓でこれを解くには、「\(r\)に適当な数字(例えば8%)を入れてNPVを計算し、0にならなければ次は9%を入れてみる…」という不毛な当て勘ループを繰り返すしかありません。実務上、普通の電卓で解くのは諦めてパソコン(Excel)を開くことになります。
脳の負担:
電卓での計算をあきらめ、思考のコンテキストが「手元の打合せ」から「パソコン画面」へと分断されます。
HP 12cの場合:現実の「お金の流れ」を打ち込むだけ
HP 12cは内部で高度な収束計算アルゴリズムを回してくれるため、人間は「出金」と「入金」の履歴を順番に打ち込むだけで完了します。
思考と操作の流れ:
- 初期投資を入力(マイナス値):
1000CHSCF0(1,000万の出金)
- 各年の入金を時系列順に入力:
300CFj(1年目:300万入金)400CFj(2年目:400万入金)500CFj(3年目:500万入金)
- IRRを一発算出:
fIRR👉8.89%
HP 12cの思考:
会議中や現地視察の際、スマホやPCを開いてExcelの
IRR()関数を組む必要はありません。目の前で提示された案件の数字をそのまま12cに流し込むだけで、「この事業は8.89%の利回りか。ターゲットの10%に届かないから、初期費用をあと80万負けさせないと買えないな」という商談の本質的な判断にその場ですぐ入れます。
📊 3つの例(NPV・住宅ローン・IRR)の比較まとめ
| 計算テーマ | 普通の電卓での体験 | HP 12cでの体験 | 思考の質の違い |
| NPV(現在価値) | 1年ずつ計算して紙にメモ・合算 | CFを時系列で置いて f NPV | 「数式の処理」から「割引率の妥当性検討」へ |
| 住宅ローン | 複雑な元利均等公式と戦う | PV(借入額)を差し替えて PMT | 「計算の正確さ」から「柔軟なライフプラン試算」へ |
| IRR(内部収益率) | 解の探索が不可能なため断念 | 出金を CF0、入金を CFj にして f IRR | 「Excelへの依存」から「その場での即決・交渉力」へ |
🎯 結論
「普通の電卓を使うとき、私たちは『電卓のキー操作や公式』に思考の半分を奪われています。
しかしHP 12cを使うと、現実の『お金の出入り(キャッシュフロー)』や『時間の経過』をそのままボタンとして置いていくだけで済む。
住宅ローンの試算でもIRRの算出でも、HP 12cは『計算の苦労』を消し去り、私たちが『意思決定(ビジネスの判断)』だけに没頭できるようにしてくれる。これこそが、この小さな黒い板が『思考の道具』と呼ばれる所以です。」