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FPiwanaga Officeがお届けするFPワンダーランド

金融電卓
App Storeで購入した「12P-Pro」

私たちは、常識と思っている事柄が意外と非常識だったりすることがよくあると思われませんか?

FPの道を志して早、20年 今、思うことは『常識と非常識』を強く感じるようになってきている自分と向き合うことです。さあ、これから『マネー』の『常識と非常識』について考えます。

私たちの『金融』に対するイメージは難しくて取っつきにくいと考えがちで、『金融リテラシー』という常識が非常識のままに放置され、間違った投資態度を正そうとしない常識がはびこっています。私が主張したい事柄は、 《マネーの達人》を参照してください。

決して難しくない『金融』の考え方を習得しようではありませんか!!

習得の手助けとなる『金融電卓』の操作から始めましょう。

事務所では金融計算教室を開催しています。

これから、『金融電卓』の操作を紹介したいと思います。

対数収益率の加法性を説明する

最初に、要点を整理しておきます。それは、3点です。

  1. 現実の不便: 運用の成果は「掛け算」で増減するため、足し算(\(+50\% – 40\% = +10\%\))をすると計算が狂う。
  2. 対数の役割: 対数(\(\ln\))は「掛け算を足し算に変換する」という性質を持っている。
  3. 加法性の実現: だから、最初から対数の世界で測っておけば(対数収益率)、複数期間のリターンをただ足し算するだけ(\(\Sigma\))で累積成果が求まる

数学的なタネ明かしは、高校数学で習う対数の最も基本的な性質「掛け算を足し算に変換する(\(\ln(A \times B) = \ln A + \ln B\))」、ただこれだけです。

1. なぜ通常の収益率(離散)は足し算できないのか?

まず、普段使っている通常の収益率(単純収益率)を考えます。

  • 1年目:株価が 100円 \(\to\) 150円(\(+50\%\))
  • 2年目:株価が 150円 \(\to\) 90円(\(-40\%\))

このとき、2年間の累積リターンを求めようとして、単純に足し算すると間違えます

\[+50\% + (-40\%) = +10\% \quad \text{(大間違い!)}\]

手元の元本は 100円 から 90円 に減っているので、実際は-10%です。

正しくは、元本に対する「倍率(成長因子)」の掛け算をしなければなりません。

\[\frac{P_2}{P_0} = \frac{P_1}{P_0} \times \frac{P_2}{P_1} = (1 + 0.50) \times (1 – 0.40) = 1.5 \times 0.6 = 0.90\]

「時間は足し算(1年目+2年目=2年間)で流れるのに、収益率は掛け算でしか合成できない」

これが、通常の収益率が抱える計算上の不便さ(非加法性)です。

2. 対数をかぶせると何が起きるか?(数学的背景)

ここで、両辺に自然対数(\(\ln\))をかぶせます。

対数には「中身の掛け算を、外の足し算にバラす」という絶対的な性質があります。

\[\ln(A \times B) = \ln A + \ln B\]

これを先ほどの価格の累積倍率にそのまま適用します。

\[\ln\left(\frac{P_2}{P_0}\right) = \ln\left(\frac{P_1}{P_0} \times \frac{P_2}{P_1}\right) = \ln\left(\frac{P_1}{P_0}\right) + \ln\left(\frac{P_2}{P_1}\right)\]

この \(\ln\left(\frac{P_t}{P_{t-1}}\right)\) という値そのものを「対数収益率(\(r_{\text{log}}\))」と名付けたのです。

すると、式はこう変わります。

\[r_{\text{log}(0 \to 2)} = r_{\text{log}(0 \to 1)} + r_{\text{log}(1 \to 2)}\]

これが「加法性(足し算ができる性質)」の正体です。 難しい連続複利の理論があるから加法性が生まれたのではなく、「掛け算になってしまう資産運用の計算を、対数の公式を使って無理やり足し算で扱えるように定義し直した尺度」が対数収益率です。

3. HP 12c で体感する「掛け算」から「足し算」へのワープ

先ほどの例(1.5倍のあと0.6倍になり、トータル0.9倍)を HP 12c で叩くと、構造がはっきり見えます。

通常の掛け算ルート

1.5  ENTER
0.6  ×          -> 0.90 (トータルで0.90倍。掛け算が必要)

対数収益率(足し算)ルート

各期の倍率を gLN で対数収益率に変えてから足します。

/* 1年目の対数収益率: ln(1.5) */
1.5  g LN       -> +0.4055

/* 2年目の対数収益率: ln(0.6) */
0.6  g LN       -> -0.5108

/* 2年間の合算: 単純に足し算 (+) するだけ */
+               -> 【 -0.1054 】

この合計値 -0.1054 を、指数関数 ge^x で元の倍率に戻してみます。

g e^x           -> 【 0.90 】 (ちゃんとトータルの 0.90倍 に着地する!)

スッキリ整理すると

  • 問題点: 複数期間の資産運用は、掛け算(\((1+r_1)(1+r_2)\cdots\))で計算しなければならず、統計処理や確率計算で非常に扱いづらい。
  • 数学の知恵: 対数の公式「\(\ln(A \times B) = \ln A + \ln B\)」を使えば、掛け算を足し算に変換できる。
  • 対数収益率: だから、最初からリターンを対数(\(\ln(P_t / P_{t-1})\))で測っておけば、期間全体のトータルリターンを「日々のリターンの単純な足し算(\(\Sigma\))」として扱える

「足し算で累積リターンが計算できる性質の数学的背景」とは、大げさなものではなく「対数の性質 \(\ln(A \cdot B) = \ln A + \ln B\) を利用して、掛け算を足し算にすり替えているだけ」と理解すると、非常にスッキリするのではないでしょうか。

連続複利収益率 \(r_c\) と離散複利(年1回複利 \(r_1\))の相互変換

この相互変換のモヤモヤは、「1年後の着地点(将来価値 \(FV\))がピッタリ同じになるように、2つの違う乗り物のスピードを等号(\(=\))で結んでいるだけ」と捉えると一瞬で解消します。

数式の天下りではなく、「1年後に手に入る金額が同じになるルール」として解き明かします。

1. 舞台設定:1年後に同じゴールに着くレース

元本 1円 を預けて、1年後に増えるレースを考えます。

  • 乗り物A(離散・年1回複利 \(r_1\)):1年間じーっと利息がつかず、1年目の最後にドカンと利息 \(r_1\) がつく。
    \[\text{1年後のゴール金額} = 1 + r_1\]
  • 乗り物B(連続複利 \(r_c\)):一瞬の休みもなく、分子レベルの極限で利息が元本に組み入れられ続ける。極限の定義により、1年後の増殖率は \(e^{r_c}\) になる。
    \[\text{1年後のゴール金額} = e^{r_c}\]

2. 「相互変換」の正体は、ただのイコール

「この2つの運用方法が『等価(同じ価値)』である」とは、1年後の着地点が完全に一致するということです。

\[1 + r_1 = e^{r_c}\]

相互変換の公式とは、この左右を入れ替えて解いただけのものです。

① 連続複利 \(r_c\) から、離散複利 \(r_1\) を知りたいとき

「\(r_c\) のスピードで連続運用した結果、年1回複利だと年利何%に相当する?」

\[r_1 = e^{r_c} – 1\]

② 離散複利 \(r_1\) から、連続複利 \(r_c\) を知りたいとき

「年1回 \(r_1\) の成果を、休みなく増え続ける連続複利のスピードで表すと何%?」

両辺に自然対数 \(\ln\) をかぶせると、\(e\) と \(\ln\)は打ち消し合う(逆関数の関係)ので、右辺の肩から \(r_c\) が降りてきます。

\[\ln(1 + r_1) = \ln(e^{r_c}) \Rightarrow r_c = \ln(1 + r_1)\]

3. 具体例:なぜ \(r_c\) は \(r_1\) より小さくなるのか?

具体的な数字を当てはめると、感覚が完全に腑に落ちます。

「年1回複利で 5%(\(r_1 = 0.05\))の成果を、連続複利 \(r_c\) で達成するには、何%のペースで走ればいいか?」

HP 12c で叩いてみます。

/* r_c = ln(1 + 0.05) = ln(1.05) */
1.05  g LN      -> 【 0.04879 】 (約 4.88%)
  • 年1回複利のスピード:5.00%
  • 連続複利のスピード:4.88%

なぜ連続複利のほうが数字が小さくて済むのでしょうか?

「連続複利は、つねに利息が利息を生むフル回転(超高頻度再投資)をしているため、低めのペース(4.88%)で走っていても、年1回しか利息がつかないのんびり屋の 5.00% に追いついてしまうから」です。

逆に、連続複利 4.88% の着地点を元に戻すと:

0.04879  g e^x  -> 【 1.0500 】 (きれいに 1 + 0.05 に戻る)

スッキリ整理

  • 基本の約束事:
    \[1 + r_1 = e^{r_c}\](「1年放置して最後に利息をもらう」のも「一瞬の隙もなく連続再投資する」のも、1年後の財布の中身は同じ
  • 対数 \(\ln\)の役割:右肩に乗っかっている連続スピード \(r_c\) を地上に降ろすためのハシゴ。
  • 電卓での直感:1 + r1g LN を押せば「連続のスピード \(r_c\)」になり、その \(r_c\) に g e^x を押せば「離散の倍率 \(1+r_1\)」に戻る。

数学的な難解な変換ではなく、「同じゴール金額(\(FV\))を共有している2つの表記の看板の掛け替え」に過ぎません。

ミクロ(個人)・ツール(数理)・マクロ/市場(金融工学)の3層のトライアングル

ここで、野口悠紀雄先生の『金融工学、こんなに面白い』などの著作で一貫して語られる、あの切れ味鋭い「金融工学・市場メカニズムの視点」を導入します。

山崎元先生の「個人の意思決定(自由の放棄)」、森平爽一郎先生の「数理的プロセス(タイムトラベルの通行料)」に、野口先生の「市場における財の相対価格」という視点が加わることで、ミクロ(個人)・ツール(数理)・マクロ/市場(金融工学)の3層のトライアングルが完全に完成します。

野口悠紀雄先生が説く利子率の本質

野口先生の金融工学における核心は、「金融とは、異なる時点の間で行われる『財の交換(異時点間の取引)』である」という点です。

そこから導かれる利子率の定義は:

「『現在の財(消費)』と『将来の財(消費)』との交換比率(相対価格)である」

  • お金そのものを貸し借りしているのではなく、「いま消費できる財(リンゴやパン)」と「1年後に消費できる財」を市場で交換している。
  • リンゴとミカンの交換比率が「価格」であるのと全く同じで、「今日の消費」と「1年後の消費」の交換比率が \(1 : (1+r)\)、すなわち金利とは「異時点間の価格」に他ならないという視点です。

金利 \(i\) の3つの顔(なぜ金利を理解せねばならないのか)

  1. 主観の視点(山崎元)「今使う自由を手放す対価(時間のレンタル料)」
    • 人間心理としての「待つこと・我慢すること」への補償。だから拘束期間が長くなるほど、あるいは相手が信用できないほど高い料率を要求する。
  2. 市場の視点(野口悠紀雄)「現在と将来の『交換比率(相対価格)』」
    • 金融とは「いま消費する財」と「将来消費する財」の物々交換である。リンゴとパンを交換する相対価格があるように、現在と未来を交換する市場価格こそが金利である。
  3. 数理・ツールの視点(森平爽一郎)「時間を旅するための『通行料』」
    • HP 12c の中で資金を未来へ進め(複利)、あるいは現在へ引き戻す(割引)。時間軸の関所を通過するたびに乗除される目盛りの拡大縮小率が金利 \(i\) である。

この3つを揃える教育的メリット

  • 野口視点で「金融の本質は時間軸をまたぐ市場取引(価格メカニズム)だ」と視野を広げ、
  • 山崎視点で「だから自分は『自由の対価』としてリスクとリターンを見極めるのだ」と我が事として腹落ちさせ、
  • 森平視点で「その時間移動の通行料を、HP 12c というタイムマシンを使って電卓上で正確に計算する」という操作へ着地する。

「金利」という無味乾燥な数字を、立体的かつ極めてクリアな概念として捉えられる完璧な導入になりませんか。

森平爽一郎先生と山崎元先生の「金利」の概念

前回の話で登場する森平爽一郎先生と山崎元先生の「金利」の概念をもう少し深めたいと思います。

日本のファイナンス教育と実務の最前線で「本質を平易な言葉でどう届けるか」を突き詰めた両巨頭の表現です。

  • 森平爽一郎先生の「通行料(トール)」の視点:『物語で読み解くファイナンス入門』などで示されるように、時間を移動する(タイムトラベルする)際に支払う・受け取るコストとしての「通行料」。HP 12c のキー操作でキャッシュフローを現在と未来の間で行き来させるとき、時間軸の関所を通るたびに \((1+i)\) という通行料が乗除されていく感覚と見事に合致します。
  • 山崎元先生の「自由の放棄=レンタル料」の視点:山崎先生が一貫して説かれていた「お金は自由の道具である」という哲学から導かれる定義です。「今すぐ使って何かに変える自由」を相手に委ねて我慢するからこそ、その拘束期間に応じたレンタル料(プレミアム)が発生する。だからこそ、リスクや拘束期間が長くなればより高い料率を要求しなければ割に合わない、という投資家目線の鉄則に直結します。

この2人の巨視的・微視的な視点を融合させて、まとめてみると腹落ち感が一段と深まります。

金利 \(i\) とは何か?

  • 本質(山崎元氏の視点): 「今使う自由」を手放す対価(時間のレンタル料)
    • お金そのものの対価ではなく、「待つという時間」に支払われるコスト。
  • 機能(森平爽一郎氏の視点): 時間を旅するための「通行料」
    • 「今日の1円」を未来へ送る(複利)、あるいは「未来の1円」を今日へ呼び戻す(割引)。HP 12c で時間軸を越えるたびに掛かる関所の通行料が金利 \(i\) である。

この2枚看板で提示すると、「なぜ金利が存在するのか(経済心理的理由)」と「電卓でどう計算するのか(数理機能)」がすっきりと1本の線でつながりませんか。

金利「i」は異なる時点を接続するための「時間軸の交換レート」というフレーズ

パターン1:最も直感的な一言(為替の比喩)

「金利とは、時間に対する『為替レート』である。」

  • 解説:
    「円とドルを交換するときに為替レートが必要なように、『今日の1円』と『1年後の1円』という別の通貨を交換するための換算レートが金利です。」

パターン2:行動・経済本質にフォーカス(我慢の対価)

「金利とは、『今使う自由』を手放す対価(時間のレンタル料)である。」

  • 解説:
    「お金そのものの値段ではなく、『待つ時間』に支払われるレンタル料です。」

パターン3:HP 12c(TVMキー)と直結させる数理的フレーズ

  • 解説:
    「HP 12c の中で資金を未来へ進めるとき、あるいは現在へ引き戻すとき、必ず掛け算・割り算される『目盛りの拡大縮小率』が金利 \(i\) です。」

金利とは、時間に対する「為替レート」。
「今日の1円」と「10年後の1円」は別国の通貨。それを等価で両替するレートが金利 (i) です。

ここでの「移動コスト(通行料)」とは、物理的な移動にかかる費用ではなく、「お金を時間軸上で未来へ送ったり、過去・現在へ呼び戻したりする際に必ず生じる『価値の目減り』や『上乗せ分』という換算差額」を指しています。

森平爽一郎先生のメタファー(比喩)をファイナンス数理の言葉に引き直すと、以下の2つの意味になります。

1. 「未来へ進む」ときの移動コスト(複利運用)

今日の100万円を、10年後の未来へ届けるとします。

山崎元先生の言うとおり「今使う自由」を10年間我慢して差し出すわけですから、10年後に届いたお金がそのまま100万円のままでは割に合いません。

  • 時間移動の条件: 10年間という時間を旅する代わりに、関所を通るごとに利息 \((1+i\)) を受け取る(上乗せさせる)。
  • 結果: 100万円が162万円(年利5%の場合)になって未来に到着する。
  • 移動コストの意味: 借り手(社会や市場)から見れば、「時間を飛び越えて他人の資金を今使わせてもらうために支払ったコスト」です。

2. 「現在へ引き戻す」ときの移動コスト(割引現在価値)

逆に、10年後に受け取るはずの100万円を、タイムマシンのように「今すぐ手元に呼び戻す(現金化する)」とします。

  • 時間移動の条件: 「10年待つ」というプロセスをショートカットして現在にワープさせるため、関所を通るごとに \((1+i)\) で割り引かれ、価値が削ぎ落とされる。
  • 結果: 10年後の100万円は、現在に到着した瞬間、約61万円(年利5%の場合)に縮んでしまう。
  • 移動コストの意味: 貸し手・保有者から見れば、「時間を前倒しして今手に入れるために差し引かれた(支払った)ペナルティ・目減り分」です。

HP 12c の操作と結びつけると

HP 12c のキーボードの上で起きているのは、まさにこの「時間移動」です。

  • PV から FV を押す操作は、「時間を未来へ進める移動」(通行料として利息が上乗せされる)。
  • FV から PV を押す操作は、「時間を現在へ巻き戻す移動」(時間をワープさせた代償として価値が削られる)。

つまり「移動コスト」とは、無傷のまま時間をまたぐことはできず、時間軸を移動するたびに必ず金利 \(i\) の分だけ価値が伸縮するという厳然たるルールそのものを表しています。

HP 12c で体感する「時間価値の尺度」

〜数式を指先で動かし、ファイナンスの基本公理を腑に落とす〜 

今回のテーマ

  1. 「異なる時点の資金は、そのまま比較できない」 というファイナンスの基本公理を理解する。
  2. 抽象的な「複利・割引・極限」の概念を、HP 12c のレジスタとキーストロークで可視化・検証する。
  3. 表面的な利率表示に惑わされず、金融商品を同一基準(実効利回り・現在価値)に引き直す尺度感覚を身につける。

セッション 1:時間を進める・巻き戻す(基本の TVM)

1. 理論の骨子

  • 将来価値(\(FV\)): 今日の 1 円を将来へ進める(複利運用)
  • 現在価値(\(PV\)): 将来の 1 円を現在へ引き戻す(割引)
  • 金利 \(i\) は、異なる時点を接続するための「時間軸の交換レート」。

2. 演習

【問】 100 万円を年利 5% で 10 年間運用するといくらになるか? また、10 年後のその金額を現在の価値に引き戻すとどうなるか?

/* 事前準備:金融レジスタの初期化 */
f CLEAR FIN

/* 1. 時間を進める (FV) */
10   n          (期間:10年)
5    i          (年利:5%)
100  CHS PV     (現在の手元資金:-100万円)
FV              -> 【 162.89 万円 】

/* 2. 時間を巻き戻す (PV) */
PV              -> 【 -100.00 万円 】 (直ちに原点へ復帰)

気付き: PVFV は表裏一体であり、符号(正負)は資金の「出(マイナス)」と「入り(プラス)」を表す。

セッション 2:物差しの目盛りを揃える(複利頻度と EAR)

1. 理論の骨子

  • 同じ「年利 6%」でも、利払い頻度(年1回・半年・月次)によって再投資の回数が異なり、実質的な受取額が変わる。
  • 比較基準を揃えるための世界共通尺度が 実効年利率(EAR: Effective Annual Rate)

2. 演習

【問】 名目年利率 6% のとき、複利頻度を増やすと 1 年後の元利合計と真の利回り(EAR)はどう変化するか?

f CLEAR FIN

/* パターンA:年1回複利 */
1    n
6    i
100  CHS PV
FV              -> 【 106.00 】 (EAR: 6.00%)

/* パターンB:月次複利 (m = 12) */
12   n          (1年を12期に細分化)
6    ENTER 12 ÷ i (月利: 0.5%)
FV              -> 【 106.17 】 (EAR: 6.17%)

/* パターンC:日次複利 (m = 365) */
365  n
6    ENTER 365 ÷ i
FV              -> 【 106.18 】 (EAR: 6.18%)

気付き: 期間を細かく刻むほど利息の再投資効果が蓄積し、見かけの 6.00% を超えて 6.18% へと膨らむ。

セッション 3:極限の物差し(連続複利と \(e, \ln\))

1. 理論の骨子

  • 複利回数を無限大に細かくした極限(\(m \to \infty\))が「連続複利」。
  • デリバティブ(オプション理論)や理論経済学の基準尺度。
  • HP 12c の青文字キー ge^xgLN は、離散の世界と連続の世界をつなぐ架け橋。

2. 演習

【問】

  1. 連続複利 6% で 1 年運用したときの到達点は?(日次複利の先にある極限値の確認)
  2. 通常の年 1 回複利 6%(\(FV=1.06\))と等価な連続複利レートは何%か?

/* 1. 連続複利 6% の将来価値 (e^0.06) */
0.06  g e^x     -> 【 1.061837 】
(日次複利 106.1831 のすぐ先に存在する「数学的上限」に着地)

/* 2. 年1回複利 6% を連続複利レートに換算 (ln(1.06)) */
1.06  g LN      -> 【 0.0583 】 (連続複利では 5.83%)

気付き: 「年1回 6%」で運用することと、「連続複利 5.83%」で休みなく運用することは完全に等価。

セッション 4:時間の流れを1点に凝縮する(年金現価計算)

1. 理論の骨子

  • 将来にわたって規則的に発生するキャッシュフローの束(年金・退職金・ローン)を、現時点の 1 つの金額に凝縮する。

2. 演習

【問】 毎年 100 万円を 20 年間受け取る権利(合計受取額 2,000 万円)がある。割引率 3% としたときの現時点の真の価値はいくらか?

f CLEAR FIN

20   n          (20年間)
3    i          (割引率 3%)
100  PMT        (毎年の受取額 100万円)
PV              -> 【 -1,487.75 万円 】

気付き: 額面合計の 2,000 万円をそのまま信じてはならない。「時間」を差し引いた実質的な資産価値は 約 1,488 万円 である。

セッション 5:歪んだ時間の補正(幾何平均 vs 算術平均)

1. 理論の骨子

  • 投資成果にブレ(変動性)がある場合、算術平均は運用成果を過大評価する。
  • 時間軸に沿った複利運用の真の姿を映し出す尺度は「幾何平均(時間加重収益率)」のみ。

2. 演習

【問】 1 年目に「+50%」、2 年目に「-40%」となったファンドがある。算術平均は \((+50 – 40) / 2 = +5\%\) だが、手元の資金はどうなったか?

/* RPN スタックで累積成長率を計算 */
1.5  ENTER      (1年目の元利合計倍率: 1.5倍)
0.6  ×          (2年目: 0.6倍)
                -> 【 0.90 】 (元本は 10% 減少して 90 になっている)

/* 幾何平均(年平均複利回り)を算出 */
g √x            -> 0.9487
1    -
100  ×          -> 【 -5.13 % 】

気付き: 見かけの算術平均(+5%)に騙されてはいけない。ボラティリティが存在する限り、幾何平均は必ず算術平均を下回る(\(r_g \le r_a\))。

今回のまとめ

  • HP 12c の 5 大キー(n, i, PV, PMT, FV)はタイムマシン:キャッシュフローの時間を進めたり巻き戻したりして、すべてを「今日の価値(\(PV\))」に引き直すための装置である。
  • 名目値ではなく実効値を見る:商品パンフレットの利率表記(名目年利、単利)に惑わされず、EAR や幾何平均という「統一された尺度」で比較する癖をつける。

投資の収益率について(その2)

「リスクはリターンを蝕む(ボラティリティ・ドラッグ:Volatility Drag)」という言葉が直感的にピンとこない理由は、「足して割る世界(算術平均)」「掛けて増減する世界(幾何平均)」の非対称性が腹落ちしていないことにあります。

結論から言うと、「同じパーセンテージ下がった分を取り戻すには、それ以上のパーセンテージの上昇が必要になる」という複利の構造そのものを指しています。

最も極端な例:\(+50\%\) と \(-50\%\)

100万円の資金を2年間運用したとします。

  • 1年目:\(+50\%\) に上昇 \(\rightarrow\)150万円
  • 2年目:\(-50\%\)に下落 \(\rightarrow\)75万円(150万円の半分)
指標計算結果意味
算術平均\(\frac{(+50\%) + (-50\%)}{2}\)0.0%「平均すればプラスマイナスゼロ」に見える
幾何平均(複利)\(\sqrt{1.5 \times 0.5} – 1\)
\(= \sqrt{0.75} – 1 \)
-13.4%実際には年率\(-13.4%\)で資産が減っている

算術平均は「損得なし(\(0\%\))」と言っているのに、手元の財布からは25万円(\(-25\%\))が消えています

なぜかというと、「増えた後の大きな元本(150万円)」に対して下落率(\(-50\%\))が掛かり、痛烈なマイナス75万円を生み出したからです。

幾何平均と算術平均の数理関係

この「蝕まれた分(目減り分)」は、統計学的に次の近似式で綺麗に表せます。

\[R_g \approx R_a – \frac{1}{2}\sigma^2\]

  • \(R_g\):幾何平均リターン(実際に手元に残る複利成長率)
  • \(R_a\):算術平均リターン(各期の期待リターンの単純平均)
  • \(\sigma\):ボラティリティ(リスク=標準偏差)
  • \(\frac{1}{2}\sigma^2\):ボラティリティ・ドラッグ(リスクによって蝕まれる量)

この式が意味しているのは、「算術平均(見かけのリターン \(R_a\))がいくら高くても、ブレ幅(リスク \(\sigma\))が大きいと、その分散の半分(\(\frac{1}{2}\sigma^2\))だけ手元の実際のリターン(幾何平均 \(R_g\))が削り取られる」ということです。

これが「リスク(分散 \(\sigma^2\))はリターン(複利成長 \(R_g\))を蝕む」の正体です。

具体的な数値で比較

期待リターン(算術平均)が同じ \(7\%\) の2つの資産を比べると一目瞭然です。

項目安定型資産 Aハイリスク資産 B
算術平均(期待リターン \(R_a\))\(7\%\)\(7\%\)
リスク(標準偏差 \(\sigma\))\(5\%\)(\(0.05\))\(20\%\)(\(0.20\))
分散(\(\sigma^2\))\(0.0025\)\(0.0400\)
ドラッグ(\(\frac{1}{2}\sigma^2\))-0.125%-2.00%
実際の複利リターン(幾何平均 \(R_g\))約 6.88%約5.00%

どちらも「平均利回り7%」と提示されていても、値動きが荒い資産Bは、激しい乱高下を繰り返す過程で毎年実質2%分の複利効果を削り取られ、長期的な資産形成ペースは安定型資産Aに大きく劣後します。

  • 算術平均:次の1年間の「賭けの期待値」
  • 幾何平均:その賭けを何年も繰り返した後の「終価の年率成長」

「リスクを取って荒波に揉まれると、算術平均と幾何平均のギャップが広がり、最終的な富の蓄積が削られる」——これが投資理論で言われる本質です。

投資の収益率について(その1)

投資収益率を計算することは、いまどきの重大な問題ですよね!そこで、今回は、以下の良問を題材として金額加重収益率(MWRR)、時間加重収益率(TWRR)を考えてみましょう。

「あるファンドの期初の資産時価は49億円だった。期初から半年後には資産時価が62億円となった。同時にファンドに5億円の資金が流入した。時価の62億円の資産に5億円を加えてさらに半年間運用を続けた結果、1年後のファンドの資産価値は60億円となった。

1年間の金額加重収益率は、いくらか?という問題です。『証券アナリストのための数学再入門』(金子誠一著)掲載の[練習問題7-2]を上記は、引用しています。

この問題で混乱しやすい最大のポイントは、「半年後の時価(62億円)をキャッシュフロー(CF)に入れてしまうのか?」という点です。

結論から言うと、途中の時価(62億円)はキャッシュフローには一切入力しません。

金額加重収益率(IRR)は「外部とのお金のやり取り(流出と流入)」だけを見るため、運用の途中でポートフォリオの内部評価額がいくらに膨らんだか・縮んだかは、キャッシュフロー計算には関係ありません(途中の時価は「時間加重収益率」を計算するときにだけ使います)。

キャッシュフローの整理(半期単位)

投資家の財布目線で、外部とやり取りしたキャッシュフローを半期ごとに並べます。

  • \(t = 0\)(期初): 初期投資として 49億円を拠出\(\rightarrow\)-49
  • \(t = 1\)(半年後): 追加で 5億円を資金投入(流入)\(\rightarrow\)-5
    ※「ファンドへの資金流入」=「投資家の財布からは流出」なのでマイナスです。
  • \(t = 2\)(1年後): 運用終了時点の評価額 60億円を回収\(\rightarrow\)+60

HP 12c でのキーストローク

  1. レジスタの初期化
    • fCLEARFIN (または fCLEARREG
  2. \(t = 0\) のキャッシュフロー(初期投資)
    • 49CHSgCF0
  3. \(t = 1\) のキャッシュフロー(半年後の追加投入)
    • 5CHSgCFj
  4. \(t = 2\) のキャッシュフロー(1年後の期末時価)
    • 60gCFj
  5. 半期のIRRを算出
    • fIRR
    • ディスプレイに 5.67(\(\%\)) と表示されます。
      ※これは「半年(6ヶ月)あたりの収益率」です。

年率換算の取り扱い

年率換算の方法が2通りあります。

  1. 単利換算(単純に2倍する / ノミナル年率)
    • そのまま 2*\(\rightarrow\)11.35%
  2. 複利換算(実効年率:\((1 + r)^2 – 1\))
    • 半期収益率 \(5.6744\%\) の状態で:
    • 100/1+ENTER*1-100*\(\rightarrow\)11.67%

時間加重収益率(TWRR)ならどう解くか?

もしこれが時間加重収益率を求める問題であれば、ここで初めて「62億円」を使います。

  • 第1期(前半半年): \(\frac{62 – 49}{49} = \frac{13}{49} \approx +26.53\%\)
  • 第2期(後半半年): 追加投入後のスタート残高は \(62 + 5 = 67\)億円。
    後半の収益率は \(\frac{60 – 67}{67} = \frac{-7}{67} \approx -10.45\%\)
  • 1年間のTWRR: \((1 + 0.2653) \times (1 – 0.1045) – 1 \approx +13.31\%\)

途中の時価を使うのが時間加重、外部の入出金だけを使うのが金額加重(IRR)」と切り分けておくと、キャッシュフローの整理が非常にシンプルになります。

日本の元利均等返済における「5年ルール・125%ルール」と「未払利息(Negative Amortization)」

日本の元利均等返済における「5年ルール・125%ルール」と「未払利息(Negative Amortization)」の検証手順です。HP12cのスタックおよび償却機能を使ってそのまま判定できます。


検証シナリオの設定(前回の継続)

  • 60ヶ月経過時点の残高(\(PV\)):26,028,858円
  • 旧返済額:77,876円
  • 5年見直し後の新金利:年1.5%(月利 \(i = 1.5\% / 12 = 0.125\%\))

1. 125%上限額の判定

新金利で再計算した理論上の返済額が、旧返済額の1.25倍(上限)に収まっているかを確認します。

  • 上限額の計算:77876ENTER1.25×\(\rightarrow\)97,345円
  • 新返済額の比較:再計算した理論返済額は 89,831円 です。
    \[89,831円 \le 97,345円\]上限キャップ(125%ルール)には抵触しないため、6年目(61ヶ月目)からの実際の毎月返済額は 89,831円 となります。

2. 未払利息(Negative Amortization)の発生確認

金利が急騰した場合、「月々の支払額 < 月々の発生利息」 となり、差額が未払利息として累積します。

  • 61ヶ月目の月間発生利息の算出(HP12c操作):
    1. 26028858ENTER
    2. 1.5ENTER12÷%\(\rightarrow\)32,536円(初月の利息額)
  • 未払利息の判定:月々返済額(89,831円 または 上限適用時でも77,876円〜97,345円)に対して利息は 32,536円 のため、元金充当額が十分に確保されており 未払利息は発生しません

3. 【参考】未払利息が発生する「臨界金利」の逆算

「旧返済額(77,876円)のまま金利だけが急上昇した場合」に未払利息が発生するボーダーライン金利をHP12cで瞬時に求めます。

  • 操作手順:
    1. 77876ENTER (月支払額)
    2. 26028858÷ (残高で除算 \(\rightarrow\)限界月利 0.003)
    3. 12×100×\(\rightarrow\)3.60%

年利が 3.60% を超えると月々の利息(約78,087円〜)が旧返済額(77,876円)を上回り、返済しても元金が増加する「未払利息」が発生します。

また、月々の返済額の内訳(利息分・元金分)を直接かつ正確に出力できます。

TVMレジスタに「現在の残高(\(PV\))」「新月利(\(i\))」「毎月返済額(\(PMT\))」がセットされた状態で 1 n f AMORT を実行する手順です。


HP12cでの「1ヶ月分の利息・元金」確認手順

新金利(1.5%)での返済開始月(61ヶ月目)の内訳を確認する場合:

  1. 前提のセット(Step 3で新PMTを算出した直後の状態)
    • \(PV = 26,028,858\)
    • \(i = 1.5 \div 12 = 0.125\)
    • \(PMT = -89,831\)
  2. 1 n (計算対象を「次の1期分」に指定)
  3. f AMORT
    • 画面表示:-32,536円(この1ヶ月間に支払う 利息相当分
  4. x≷y (XレジスタとYレジスタを入替)
    • 画面表示:-57,295円(この1ヶ月間に返済される 元金充当分
  5. RCL PV
    • 画面表示:25,971,563円(1回返済後の 新ローン残高

HP12cでの確認手順(年利3.60%の場合)

残高26,028,858円に対して、月々の発生利息がちょうど返済額77,876円と同額になる月利息を計算します。

  • 26028858 PV
  • 3.60 ENTER 12÷ i(月利0.30%)
  • 77876 CHS PMT(旧返済額をセット)
  • 1 n
  • f AMORT 表示:-78087(この月の利息)
  • R↓R↓R↓- 表示:-210.57(つまり元金が210円増える=未払い利息)
  • RCL PV 表示:26029068(返済したのに残高が26028858から210円増加)

 


125%ルール等で「返済額(PMT)を固定」した場合の検証

もし金利急騰時などに「実際の支払額(上限キャップ額や旧返済額など)」を指定して内訳を見たい場合も、手動で \(PMT\) を上書きしてから同様に確認できます。

  • 例:旧返済額(77,876円)のまま金利だけが上昇した場合の内訳
    1. 77876CHSPMT (支払額を固定設定)
    2. 1nfAMORT\(\rightarrow\)-32,464円(利息)
    3. x≷y\(\rightarrow\)-45,412円(元金充当分)

fAMORT を使えば、利息・元金・残高の3つがスタック操作(x≷y)と RCLPV だけで一連の流れとして確認できます。

HP12c金融電卓の機能活用デモ:変動金利住宅ローンのシナリオを解く

HP12cのメモリレジスタを解析することで、複雑な変動金利住宅ローンを扱い、ベンチマーク金利が変動した際に償却スケジュールを途中で再計算します。標準のTVMキーをカスタムRPNスタックシーケンスで上書きすることで、既存のキャッシュフローデータを消去することなく、調整後の月々の支払額、金利のリセット、および残高を瞬時に算出します。

HP12cのTVM(貨幣の時間的価値)機能と償却(fAMORT)機能を使えば、データをクリアすることなく金利見直し時の残高把握と新返済額の再計算がスムーズに行えます。

前提条件の例

  • 当初借入額(\(PV\)):3,000万円(30000000
  • 借入期間:35年(420ヶ月)
  • 当初金利:年0.5%
  • 変動タイミング:5年後(60ヶ月返済後)に年1.5%へ上昇
  • 残存期間:30年(360ヶ月)

Step 1: 当初返済額(PMT)の算出

  1. fCLEARFIN (TVMレジスタをクリア)
  2. 30000000PV
  3. 0.5ENTER12÷i (月利を設定)
  4. 420n
  5. PMT\(\rightarrow\)-77,876円(当初の月々返済額)

Step 2: 5年後(60ヶ月後)のローン残高を取得

TVMの数値を保持したまま償却計算を実行します。

  1. 60n
  2. fAMORT (画面には60回分の累計支払利息が表示される)
  3. x≷y (押すと60回分の元金返済累計が表示される)
  4. RCLPV\(\rightarrow\)26,028,858円(60回返済直後の元金残高がPVに格納されている)

Step 3: 金利上昇後の新返済額を再計算

現在のPV(残高)をそのまま引き継ぎ、残存期間と新金利を入力してPMTを求めます。

  1. 1.5ENTER12÷i (新金利を月利にして入力)
  2. 360n (残存月数:30年 \(\times\) 12ヶ月)
  3. PMT\(\rightarrow\)-89831円(見直し後の新返済額)

HP12c操作のポイント

  • fAMORT を実行すると、指定した期数経過後のローン残高が内部的に自動で PV レジスタへ更新されます。数値を手動で再入力する手間が省け、入力ミスを防げます。
  • 日本の変動金利における「5年ルール・125%ルール」を検証する場合も、上記で算出した実質支払額(89,831円)と上限額(77,876円 \(\times\) 1.25 = 97,345円)の比較や、未払利息の有無の確認にそのまま活用できます。