「ε-δ論法」に込められた知恵

今回で、投稿が100回目になりますので、記念してというのはおこがましいですが、ちょっと趣を変えてお伝えしたいと思います。

正直申しまして、上記の「ε-δ論法」なるものが言わんとしていることが理解できません。長岡亮介先生がお経のように、下記の文を100回唱えよとおっしゃっていますので、それを実践しようと思います。ご賛同される方は一緒にやってみましょう!

「般若心経」を唱えだしてから、もう4年になるのですが「276文字にこめられた生き方の真髄」を究めるまでには・・・。

それでは、ご紹介しましょう!

「誤差の限界を与える任意の正の整数 ε に対して、適当な正の数 δ をとれば、X₀からの距離が0より大、δより小、すなわち0<|X-X₀|< δ となる任意のXに対してf(X)と1との誤差|f(X)-1|が ε より小となる」

『数学的な思考とは何か』長岡亮介著より引用

ネイピア数eの定義 割り算その8

$$\left( 1+\frac {1}{n}\right) ^{n}$$

上の数式のnを無限に大きくしたときの値がeという自然対数の底なのだが、

この定数は、自然科学において頻繁に登場する定数です。登場の頻度はπとどちらが多いか、良い勝負です。πの定義は非常に直観的で易しいため小学校で習うのに対し、eの定義は微分を伴うため高校で初めて登場します。

いま、関数$$y=a^{x}$$をxについて微分してみます。

すると、例外なく$$\frac {d}{dx}\left( a^{x}\right) =ka^{x}$$という形になります。

つまり、指数関数の微分(増加率)は常に関数の値に比例するのです。

いくつかのaについて定数kを具体的に計算すると、a=2.5と3の間にk=1となるちょうど良いaがあることが想像されます。これを詳しく計算するとa=2.71828・・・となり、これは、正に上記のネイピア数です。

[『理系人のための関数電卓パーフェクトガイド』遠藤雅守著から引用

複利のおそろしさ 割り算7

複利で増加していく量をxとしてみましょう。xは時間の経過につれて、どのように増大していくでしょうか。ある瞬間にxが増加する割合は、そのときのxに正比例します、すなわち、

$$\frac {dx}{dt}=ax$$

上記の式は微分方程式です。

の関係であります。利息の話なら、あるときの元利合計xに比例して利息が付き、元利合計が増加します。つまり、dx/dtは、元利合計の増加率(単位期間に付加される利息)を表わし、aは利率を、xはその元利合計を表わしていることになります。

$$\frac {dx}{x}=adt$$

上の式の両辺を積分します。

$$\int \frac {dx}{x}=\int adt$$

微分方程式を解いた結果が下記の式です。

$$x=Ae^{at}$$

これが、tの関数としてのxの形です。Aはもちろん、t=0のときのxの値です。

『微積分のはなし(上)』大村平著から引用

この本の最後「微分は、どう変化しているか

積分は、その結果どうなったか」

を調べるためのテクニックだと書かれています。

この一連の思考パターンを、頭に叩き込むようお経のごとく何度も何度も唱えてみようと思い、投稿させていただきました。

「微分」は割り算を発展させたもの 割り算その6

以下は、蔵本貴文さんの著書『学校では教えてくれない!これ一冊で高校数学のホントの使い方がわかる本』の引用文です。ご紹介させていただきます。

第3章「本当は単純! 微積分」の3節に「微分は「すごい割り算」だった!」には微分の本質は「傾きを求めるための割り算」と超簡単に紹介した後、単なる割り算では求められない傾きも、微分なら求められると「すごい割り算」の意味を発展させておられます。

そう、上の題名をわたしたちに理解させるのです。一度読んでみてください。難しいと敬遠していた「高校数学」が、著者のことばでいうならば、

「なぜ、一見難解で奇妙な数学が生まれたのか、その必要性や使い方は、ばっちりわかります。こうしたことは、教科書にはほとんど書かれていませんが、単なるパズルが長い年月を超えて語り継がれたのではありません。そこには明確に人間の活動に役立つ何かがあるのです。

それを知っておくことの方が、計算方法を学ぶより、よっぽど大切です。なぜなら、今は計算だけならコンピュータがやってくれますから・・・。

実は、数学を使って飯を食っているプロというのは、世の中にはたくさんいます。例えば私も、その一人です。私は半導体メーカーでモデリングという仕事をしているエンジニアです。モデリングというのは、半導体素子の特性を数式で表す仕事です。

私は数学を、例えば製品を設計するなど、具体的な対象を通じて見ています。すると、教科書に載っている美しさを重視した抽象的な議論と違う、もっと具体的なイメージ、数式が見えてくるのです。

方程式1つとっても、教科書には抽象的な数式しか書かれていませんが、私たちには仕事の上で具体的な何かを想定して使います。その、具体性が数学の理解を楽にしてくれるのです。

「最初から学校でこういった意味を教えてくれれば、どんなにすんなり理解できただろう」

仕事を通じて数学を見つめ直す中で、何度そんなことを思ったことでしょうか。それは、あまり外に出ることのない、エンジニアの持っている暗黙知と言えるものかもしれません。

さて、この本はそんな私が高校数学の暗黙知を、たった一冊で理解してもらおうというものです。

上記の記載のご本 著者蔵本貴文氏

高校数学は、わたしたちも諦めなければ理解できないことではなく、「明確に人間の活動に役立つ何か」であることをこの本は教えてくれます。

ところで、新型コロナウイルスで世界中が混乱している最中思うことは、髙橋洋一先生が書いてる『ド文系大国日本の盲点』です。わたしたちは数量的に物事を考えることが苦手というより、拒否する態度をとることを反省しなければなりません。もし、今回も政府がこの弊害から逃れることができなかったら、経済政策の失敗は経済的な弱者に強烈な生活苦を強いるし、人を殺すと、先生は言われています。高校数学はわたしたちを救う力にもなるのです。

「利子率」は現在財と将来財の相対価格である。割り算その5

「現在目の前にある1個のリンゴ」と「将来得られるはずの1個のリンゴ」を考えよう。リンゴそのものが物理的に同一のものであっても、通常はこれらは同じ価値のものとは評価されない。通常は、「現在の1個のリンゴ」のほうが「将来の1個のリンゴ」よりも価値が高いと評価されるのである。

それには、いくつかの理由がある。まず、消費者の側で、現在のリンゴを将来のリンゴより高く評価する心理的な偏りがある。個人の生涯が有限であることが、このような偏りを生む基本的な理由だろう。一方、生産の面でも、現在のリンゴを高く評価する理由がある。

それは、現在の1個のリンゴの種から、将来時点で多数のリンゴが収穫できるからである(こうした事態は、投資から得られる生産物について、一般的に期待されることだ)。

以上のことから、現在のリンゴを単位にとって表わした将来のリンゴの価格をpとすれば、pは1より小さい値となる。「将来のリンゴの価格がpである」とは、「将来のリンゴ1個が、現在のリンゴp個と同じ価値である」ということを意味する。したがって、将来のリンゴ1/p個が現在の1個のリンゴと同じ価値になる。

ところが、通常の財の価格と異なり、将来財の価格は、p=1/(1+r)で定義されるrで表わす習慣がある。したがって、上のことをrを用いていえば、(A)「現在のリンゴ1個と将来のリンゴ(1+r)個とが同じ価値だ」ということになる。あるいは、同じことを、(B)「将来のリンゴ1個と現在のリンゴ1/(1+r)個が同じ価値だ」といってもよい。

(A)の表現をする場合には、rを「利子率」(interest rate)とよぶ。(B)の表現をする場合には、rを「割引率」(discount rate)とよぶ。そして、(B)のことを、「将来のリンゴ1個の『割引現在価値』(discounted present value,あるいは、単に『現在価値』)は1/(1+r)個である」という。

以上で重要なことは、「利子率(あるいは、割引率)は価格である」ということだ。利子率は、現在財と将来財の相対価格なのである。そして、「将来財の割引現在価値が1/(1+r)個だ」というのは、「ミカン2個がリンゴ1個と同じ価値だ」と同じようなことをいっているのである。ただし、用語が特殊なので、特別のことを述べているかのような錯覚に陥り、しばしば混乱が起こる。

『金融工学』著者野口悠紀雄、藤井眞理子のご本の引用文

ファイナンス理論入門には、欠かせない『割引現在価値』という概念の説明文です。じっくり味わいたい含蓄のある内容なので、全文引用させていただきました。野口先生ありがとうございました。この理解が、わたしたちの『金融リテラシー』の基礎になるとわたしは考えています。金融電卓を使えば、より理解が進むと思います。

ギャンブルに負けない方法 割り算その4

この表題の割り算の数式は、以前に紹介させていただいたと思うが、量子力学では我が国の第一人者である大栗先生の『数学の言葉で世界を見たら』というご本からのものです。これは、第一話の「不確実な情報から判断する」という中に書かれたセクションからの引用。

「2つのことが独立に起きる確率は、おのおのの確率の積になる」という性質を応用して、ギャンブルで負けない方法を伝授しよう、というくだりである。

$$P\left( m,N\right) =\frac {1-\left( q/p\right) ^{m}}{1-\left( q/p\right) ^{N}}$$

上記の確率の公式は、いろいろなことを教えてくれる。

すぐにわかることは、「ちょっとでも不利なギャンブルは、してはいけない」ということだ。

同じようなことは、君がこれから生きていくうえでいろいろな時に経験するはずだ。

確率pのほんのちょっとの差が、大きな違いを生む。よく、「毎日の積み重ねが大切だ」といわれるけれど、確率P(m,N)の公式を使うと、それがどれくらい大切なものか、数字としてはっきりわかる。

それが数学の力だ。

『数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学』大栗博司著

是非、皆さんもお読みになってください。

twitterでも「数学は不確実な情報から判断するときに、とても役立つ道具です。ネットに不確実な情報が溢れているいま、子どもと一緒に読みたい一冊」と投稿されているsunaoさんにいいね!をしました。また、Tsuyoshi Ideさんは「超面白いのでおすすめ。子供にドヤ顔で数学史のエピソードを語れるようになると思う。」とおっしゃています。私も、同感です。

政府の税外収入「シニョレッジ」割り算その3

政府が発行する国債を日銀が引き受ける場合は、日銀の納付金を下記の式の左辺で算出できる。(現在から)将来の納付金をすべて足した額が税外収入となるのである。また、それは増刷された紙幣の総額(M)と等しくなっていることを表している。これは、髙橋洋一先生のご本で『経済のしくみがわかる「数学の話」』から引用したものである。私たちは、国債は借金だと認識しているが、政府は 発行された国債の総額 分を返済する必要のない『お金』として手に入れることができる権利を持っている。これを通貨発行益『シニョレッジ』という。このお金を使う良し悪しによって、国民の生活に甚大な影響を及ぼしてきた過去がある。今、正に同じような過ちをまた、犯してしまった責任は、現政権にある。

$$\frac {r\cdot M}{1+r}+\frac {r\cdot M}{\left( 1+r\right) ^{2}}+\frac {r\cdot M}{\left( 1+r\right) ^{3}}+\ldots =\frac {r\cdot M/\left( 1+r\right) }{1-\frac {1}{1+r}}=M $$

                      r=利子率=金利