今回も『数学の言葉で世界を見たら』を参照します。「数学」は物事を明晰に考える道具であり、また「数学の抽象化の力」は素晴らしいということを知ってほしいと大栗先生は思って、この本を出されていることが文章の随所に現れているので感動します。先生の言葉ですが、「数千年にわたる数学者の努力の跡をたどることは、人類の知の素晴らしさに触れるまたとない機会なので、大切にしてほしいと思う。」と述べられています。
「2次方程式の華麗な歴史」のくだりの中で「3大作図問題」があります。これらを2000年もの年月をかけて数学者たちは解こうと努力しました。ところが、定規とコンパスだけでは作図できないことが証明されてしまったのです。しかし、どうして不可能だなどといえるのだろう? みんなが思う疑問点ですよね。そこで重要になるのが「2次方程式」なのです。この判定基準を明確に述べたのは、人類史上最も偉大な数学者の一人、19世紀のカール・フリードリッヒ・ガウスだとされています。ガウスの発見によって、作図問題は定規やコンパスを使った作業から解放され、ある数が有理数と平方根で表現できるかという問題に昇華され、代数の方法で解くことができるようになったのです。これが「数学の抽象化の力」であると述べられています。