「HP12c」という機械の「哲学」

HP12cのボタンを叩くとき、私たちは無意識に「すべての未来を『今』という一点に集約して評価している」ことになります。

下記に、数式を載せます。これは、HP12cのユーザーズガイドの付録に掲載されている、端日数がない場合のTVM(お金の時間価値)の基本計算式です。

\[0=PV+PMT\left[\frac{1-(1+i)^{-n}}{i}\right]+FV(1+i)^{-n}\]

この式の構成要素の意味

式は、大きく3つのパーツに分かれています。

  • PV(現在価値):そのままの価値です。
  • PMT(年金部分)の現在価値:\(\frac{1-(1+i)^{-n}}{i}\)という部分は「年金現価係数」と呼ばれます。毎回の支払い(PMT)が、トータルで今いくらの価値があるかを計算してます。
  • FV(将来価値)の現在価値:\(FV×(1+i)^{-n}\)は、将来のまとまった金額を、今の価値に割り戻したものです。

HP12cでの直観的なイメージ

HP12cのキー(n, i ,PV,PMT,FV)を使って計算しているとき、電卓の内部では常にこの式が動いています。

「無限等比級数の和」も、実はこの式の発展形です。n(期間)を無限大にしたときに、第3項(FV部分)はゼロに消え、第2項(PMT部分)の年金現価係数の分子部分が1になり、PV=PMT/iという、私たちが何度も計算した形に辿り着きます。

PMTの部分がシンプルに1/i に収束していく性質を利用したものです。

キャッシュフローの「翻訳」作業

この式は、時間のバラバラな地点で発生するお金を、すべて「今現在の価値」に翻訳しています。

第5回自有館セミナー「インフレ時代のお金の常識・非常識」を開催します!

前回4回目のセミナーの主題「統合政府バランスシートで解き明かす日本財政の真実」でポイントになる日銀の国債引き受けによるお金の誕生を否定し、財政支出として国民の手元に回り、経済成長を促すどころか、借金大国と脅し、日本財政破綻を主張する誤解を解いたのであるが、今回は、無限を操る技術「hp12c」の魅力を紹介してお金の真実を探求してみたい!そこで、日銀納付金の正体を暴きたい。

  • 日時:令和8年5月10日(日)  :13:00~15:00
  • 場所:白石町ふれあい郷「自有館」・視聴覚室 ☎0954-65-3366
  • 受講料:無料
  • 定員:18名程度(金融電卓が9台なので)
  • 申し込み:岩永FP事務所☎0954-65-2130
  • 締め切り:5月4日(月)
  • 講師:岩永 充 CFP®(日本FP協会認定)

無限等比級数と現在価値の関係

例えば、毎年一定の金額(C)が永遠に支払われるとします。割引率(期待収益率)をrとすると、それぞれのキャッシュフローの現在価値は以下のようになります。

・1年目: \(\frac{C}{(1+r)}\)

・2年目: \(\frac{C}{(1+r)^2}\)

・3年目: \(\frac{C}{(1+r)^3}\)

・・・・n年目: \(\frac{C}{(1+r)^n}\)

これらすべてを足し合わせた合計(PV)は、数学的には初項 \(a=\frac{C}{(1+r)}\) 、 公比 \(X=\frac{1}{(1+r)}\)の等比数列の和となります。

公式の誕生(なぜ「収束」するのか?)

無限に足し続けるのに、なぜ合計が出るのか。それは公比 \(X=\frac{1}{(1+r)}\)が1より小さいため、遠い未来の価値はゼロに限りなく近づく(収束する)からです。

無限等比級数の和の公式 \(S=\frac{a}{1-X}\)に当てはめると、驚くほどシンプルな式が導き出されます。

             \(PV=\frac{C}{r}\)

「無限に続く未来を、たった一回の割り算で『今』に閉じ込めることができる。これが無限等比級数の魔法であり、金融の知恵です」

無限等比級数を使って「無限の未来」を「現在の価値」にギュッと凝縮するプロセスは、数学的にも金融理論的にも最も美しい部分の一つです。

「現在価値に割り戻す」とは

「将来もらえるお金が、今現在の価値に直すといくらになるかを計算する」ということ

ファイナンスや投資の分野で非常に重要な考え方(私は『金融リテラシー』の最重要項目と考えています)で、英語ではDiscounting(ディスカウンティング)と呼びます。

1.なぜ「割り戻す」必要があるのか?

 お金には「時間価値」があるからです。

  ・今の100万円:今すぐ投資に回して利息を生むことができる。

  ・10年後の100万円:それまで使えないし、利息も付かない。

   さらにインフレで物価が上がれば、買えるものが減ってしまう。

つまり、「将来の100万円」は「今の100万円」よりも価値が低いと考えます。

そのため、将来の金額を今の価値に変換(目減り)させる作業が必要になります。 

2.どんな時に使うのか? 

  ・企業の価値評価(DCF法):その会社が将来稼ぐキャッシュフローを

   現在価値に割り戻して、「今の株価は妥当か?」を判断する。

  ・投資判断:不動産や設備投資などで、将来得られる収益の合計を

   現在価値に割り戻し、投資額を上回るかチェックする。

  ・年金・保険:将来受け取る給付金のために、今いくら積み立てる

   べきかを計算する。

3.基本的な計算式    

 現在価値(PV:Present Value)は、以下の式で求められます。

PV=FV/(1+r)nPV=FV/(1+r)^n

  • FV:将来価値(Future Value/将来もらえる金額)
  • r:割引率(期待される利回りや金利)
  • n:期間(年数など)

(結論) 「割り戻す」とは、将来の不確実性や利息分を差し引いて、今のフラットな目線でお金の価値を評価し直すことだと言えます。

       

『HP12c』という小さな機械

HP12cという40年以上前の小さな機械が、実は現代の巨大な金融市場や国家予算の背後にある「期待と価値の数学」をそのまま体現しているということは、最高にクールな事実です。

「HP12c的・思考のチェックリスト」を掲載する。

価値を判断する時の3つの目

1.「分子」の目(実績)

  ・今、いくら稼いでいるか?(配当D)

  ・目の前の数字に注目する、もっとも一般的な視点です。

2.「分母:右側」の目(リスク) バランスシートの貸方

  ・世の中の金利や、その事業のリスクはどうか?(割引率k)

  ・ここが上がると、どんなに頑張っても価値は目減りしてしまいます。

3.「分母:左側」の目(希望) バランスシートの借方

  ・民営化や効率化で、将来の伸び率は変わるか?(成長率g)

  ・技術革新や新サービスが生まれる期待

  ・コスト削減が継続的に行われる期待

国営や公的な組織の場合、現状維持が基本となるためgがゼロに近いとみなされがちですが、しかし、民営化や効率化によって、これらが市場に「将来にわたって成長が続く(g>0)」と認識された瞬間、バランスシート上の資産価値は、単なる現金の積み上げとは比較にならないレベルに膨れ上がります。

結論として、この「意外性」は私たちの常識を覆す事実なのです。この事実を確かに認識するためには、金融電卓「HP12c」を使って計算することなのです。

「一生懸命に働いて利益を出す(Dを増やす)」ことよりも、「この組織は将来にわたって良くなり続ける(gを上げる)」と信じさせることの方が、資産価値に対するインパクトは圧倒的に大きいのです。

私たちが、高校数学Ⅲで勉強する「無限等比級数の公式」は、(私は文系人間で勉強する機会がありませんでした。)単なる算数ではなく、「期待が価値を作る」という資本主義のダイナミズムを証明しています。これを具現化したものが、金融電卓「HP12c」なのです。

    金融リテラシーセミナー開催します!

    演題:『統合政府バランスシートで解き明かす日本財政の真実』
    副題:なぜ日本は破綻しないのか?「国の借金 1342兆円超え」(2025年12月末時点)

    明解金融講義『世界インフレ時代のお金の常識・非常識』(髙橋洋一著)

    日時:令和8年4月5日(日) 13時〜15時

    場所:白石町ふれあい郷自有館視聴覚室

    ☎0954-65-3366

    受講料:無料

    定員:18名程度

    お申込み:岩永FP事務所 杵島郡白石町深浦5559番地

    ☎0954-65-2130

    締め切り:令和8年3月末日

    私としては、2017年10月26日以来のセミナー開催となります。約8年ぶり、約3000日ぶりとなります。場所もまったく同じでサイドバーの先頭に張り付けた動画の場所です。

    お近くの人は、是非お出でください。定員18名と書いていますが、もし時間があれば、金融電卓で『現在価値』の意味を理解して欲しかったからで、視聴覚室のキャパは十分有りますので、オーバーは大歓迎です。

    宜しくお願い致します。

    日本の金融環境の非常識

    私たちは、財務省、金融機関、日銀の闇を直視しなければ、ずーと騙され続け、バカにされる現状でいいのだろうか? 高橋洋一先生の上記のユーチューブをじっくり見ていただきたい。『金融リテラシー』の常識が、そこには、ある。

    日銀 利上げ決定

    以上のように、日銀が利上げを決定した。日本の経済政策で高市政権がアクセルを踏む一方、今回の日銀のブレーキが将来の経済成長に下降の大きな影響をもたらすことは、過去の日銀の失敗を彷彿させる。なぜ、日銀は物価のインフレ目標2%到達を無視して、急いで金利引き上げをおこなうのだろうか? 

    銀行という特別な関係人に利益供与を考慮したとしたら、全く国益に反するあるまじき行為だと言わざるを得ない。そうでないことを信じたいが、世界の常識が通用しないということが、我が国の金融界の常識になっているので疑わざるを得ない。