「金利は未来と現在を往復するタイムマシンの乗車賃」であるという考え方がまさに『TVM』なのでです。HP12C の【TVM】メニューには【n】キー、【i】キー、【PV】キー、【PMT】キー、【FV】キーがあるのは『TVM』を考えるためにあるのです。
ここでわたしたちは『お金の時間価値』を深く考えなければならない事例をご紹介しましょう。『物語で読み解くファイナンス入門』(森平爽一郎著)の中の第2章「時は金なり」の箇所に載っています。
住宅ローンの話で、あなたはいま三五歳で三〇〇〇万円のマンションを購入するため銀行からお金を借りたとします。マイホームを持てたわけです。ところが年あたりの金利が8%で年1回の返済なら、毎年三〇〇万円ずつ借金を返すとして約二一年かかる計算になります。
唐突に「銀行に支払う金額は、元本三〇〇〇万円と利子分一億二〇〇〇万円の合計、なんと一億五〇〇〇万円にもなるのです。」と書かれています。この説明としては、
自分のお金を毎年三〇〇万円ずつ年金利8%で増やしていけば、約二一年後に一億五〇〇〇万円相当のマンションを買うことができます。今のマンションは、タイムマシンに乗って二一年の未来に行き、マンションを現在に持ち帰ったことに等しいと考えるわけです。いま銀行から8%の金利で三〇〇〇万円を借りてマンションを買ったことは、こういう考えと等価だったのです。
8%の金利、あるいは一億二〇〇〇万円の金利分とは、この二一年間を即時に旅するためのタイムマシンの乗車賃なのです。したがって、金利は将来得られるサービスや財を、現在すぐに得たり消費したりするための費用です。
もう少し経済学の専門用語でいえば、金利とは現在の消費と将来の消費とから得られる満足を比較検討して、それを等しくするものなのです。
この説明がどうしても私は納得できなかったのですが、みなさんはどうですか?
実際は三〇〇万円×二一年で六三〇〇万円がわたしが銀行に返済する金額なのじゃないのか!とみなさんもお考えのことでしょう。1年でしたらそう問題にはならないでしょう。しかし、二一年ともなれば話は別です。膨大な時間価値が金利相当分として計算されなければなりません。六三〇〇万円では時間価値が表されていません。
『TVM』の概念はわたしたちが経済行動の判断基準を『金利』を仲介して『PV』と『FV』を等価でむすぶことによって提示してくれるのです。
お金と時間と金利は密接に結びついているのです。このことの理解がわたしたちには不足している点ではないでしょうか! じっくり考えてみたいものです。
以上の文章は『物語で読み解くファイナンス入門』(森平爽一郎著)を参照しています。