木村先生の『HP⒓cによるときめきひらめき金融数学』の最終章に掲載されている設例126を考えてみよう。「ドル建て債に投資すべきか、円建て債に投資すべきか。」
今から1年間、金利10%の1000㌦のドル建て債に投資するか、金利2%の円建て債に投資するかという問題なのだが、先生とは違った方法で考えてみたい。
以前、紹介した『ファイナンス数学の基礎』の小林道正先生の『数』はたくさんの具体的な量から抽象化された概念であるとみると、この問題で扱われている数は外延量と内包量に分けて区別しないと間違った演算をしてしまう危険がある。外延量では足し算や引き算は使える。内包量は掛け算や割り算に関係しているということだった。
1年、1000㌦は外延量、10%、2%は内包量である。また、この問題は為替レートを問う問題で内包量を考えなければならない。
1年後に1.1倍になるドルの価値と1.02倍になる円の価値が等しくなるにはどれだけ円の価値が変化しなくてはいけないかを演算するには割り算で対応することにすぐに気づくと思う。
ここで円に対する価値変化を見るのだから分母は1.02、分子が1.1だし、両者とも内包量なので割り算が意味のある数値である変化率(内包量)を導き出す。答えはHP12C の【Δ%】キーを使えば、一発に7.84%が出てきてしまう。
反対に、ドルの価値の変化をベースに計算すると、-7.27%になるのでドル安になる。
木村先生のステップ1からステップ4を踏んでいけば答えは導き出せるのだが、私としては違和感を感じた。みなさんも考えてみてください。
為替レートの問題は先物価格と現物価格の無裁定条件と同じで難しいように考えがちだが、『TVM』を知ってしまったわたしたちは先物価格を金利で割引いた額が現物価格に等しいという無裁定条件を考え出すことができる。