わたしたちが『TVM』のコンセプトと計算法を学ぶのはなぜでしょうか? それは、現在の投資と将来の利益を評価するからです。そのため、異なる時点間における価値を比較しなければなりません。金融の世界における取引の多くは、『TVM』に基礎をおいています。このコンセプトを理解することが『金融リテラシー』のセミナーでの中心課題であるべきだと私は考えます。
この概念は奥が深いです。私自身も長年にわたり勉強してきたのですが、新たな発見があり驚いています。だからこそ、HP12cが手放せません。使っているうちに理解が深化していくからだと思います。
私は金融電卓を使わず数式だけで、または6つの係数表で理解させるテキストを勉強させられたのですが、頭が悪いせいかどうしても腑に落ちませんでした。そうこうしているうちにCFP認定者になるためにはここの理解力よりはもっと多くの事柄を知らなければ合格はおぼつきません。
そういう時、2つのご本に私はめぐり逢いました。そのときの感動は今でも残っています。『物語で読み解くファイナンス入門』(森平爽一郎著)、『HP12cによるときめきひらめき金融数学』(木村弘之亮著)です。なかでも、木村先生にはメールで感想を述べたところ返事をいただき恐縮した記憶があります。前著は森平先生のアメリカでの大学時代に金融電卓が普通に使われていたことや帰国されて同じ電卓を探したが見つからなかったということ、後著では電卓開発者に問い合わせし、金融数学に電卓をどういう風に使いこなすのかをご紹介いただいています。
まさに、『TVM』の理解力こそがCFP認定者たるゆえんであるという信念は年を追うごとに強くなっていきました。
どうか、みなさんも諦めないで『TVM』の考え方を日本では理解できない土壌なのだという認識に立ち、金融電卓を手元に置いてチャレンジしてください。
最後に、後著の推薦のしおりに米田隆氏が書かれている言葉を紹介しよう。「新しい時代を生きるために必要となる知恵の礎の一つとなるのが『金融リテラシー』だ。」この言葉は2008年に書かれていますからだいぶ昔になりましたが、未だに金融環境は変わっていないことを危惧しているのは私一人だけでしょうか?