収益率の数学2

収益率とは、収益の効率性を表すもので、投資額の1円当たりの収益を表す量を使う。

一般に、時間的、空間的に広がりを表す量を外延量という。重さ、体積、時間、金額、投資金額、収益、人口、資本金などは外延量である。2つの外延量A,Bがあるとき、「量Bの単位当たりの量A」を内包量という。速さ、利率、人口増加率、失業率などは内包量である。

2つの外延量から内包量を求める計算が割り算である。収益率も内包量の1つであり、収益を投資額で割って得られる、投資額の単位当たりに対する収益を表す量である。

株式投資の場合は、売却額と投資額の差として収益が得られるが、もう一つの収益に配当金がある。配当金による収益をインカムゲインという。これを必ず加えて計算すること。

(収益率と期間)

年収益率と月収益率の関係を複利計算で確認してみよう。1カ月での収益率が0.04(4%)で1年間再投資した場合の売却額は

1. 【n】に12を、【i】に4を、【PV】に1【CHS】をストアする。

2. 【FV】キーを押すと、1.601032 これが答えである。

そこで、1年後の売却額を得たので、年収益率は60.1032とわかる。

3. 4【1/x】【yx】を押すと、1.04 が算出される。これは1.601032を1/12乗した値である。逆に、1.04を12乗した値は1.601032である。

(連続再投資による収益率)

年収益率が40%の株式を毎日のように連続的に再投資した場合の年間の収益率は、連続複利計算と同じで、

0.4【g】【1/x】1【x<>】【Δ%】を押すと、49.1825の年間収益率となる。

(割引債の収益率の計算)

1. 割引債の収益率

これは、簡単だ、【TVM】メニューでやってしまおう! 【FV】に額面の100、【PV】に購入単価を【n】に1をストアし、【i】を押すと、答えが返ってくる。

2. 1年満期以外の債券利回り

収益率を1年当たりに換算した率を利回りという。満期までの利回りを最終利回り、あるいはスポットレートともいう。

【TVM】メニューでで難なく、計算。

3. 割引債の現在価値PV

上記に同じ。

(利付債の収益率の計算)

ここでも、【TVM】メニューを使うのだが、上記と違う点は、【PMT】キーをクーポンの金額に使うことを覚えておこう。

1.表面利率と利回り

額面1円に対するクーポンの額を表面利率あるいはクーポンレートという。これに対して、市場価格1円に対するクーポンの額を直接利回りという。

2. 市場価格と利回りや、3. 満期利回りの計算に【PMT】を使うのである。また、クーポンが年2回の場合も2×年数を【n】キーにストアして、【i】キーの答えを2倍すれば、満期利回りになる。

(内部収益率)

内部収益率の考え方はこちらを参照願います。収益率の数学

以上は、小林道正先生のご本を参照しております。収益率の内包量の話は前にも記載しましたが大事な概念だと思い、再度掲載しております。

 

 

 

インフレ率と金利

名目金利に対してインフレ率を考慮した実質金利RIR(real interest rate)を【TVM】メニューで算出してみよう。

たとえば、名目金利が0.09(9%)であるとき、インフレ率が2%である場合の実質金利は

1. 1.02【ENTER】1.09【Δ%】キーを押すだけで6.86275という数値が表示される。これが、答えになる。

このRIRを使って実質将来価値FVを求める。毎年のインフレ率が2%とし、10年後の実質将来価値は

2. 【i】キーを押して、上の値をストアする。

3. 【n】に10を、【PV】に1【CHS】をストアする。

4. 【FV】キーを押すと、1.94206が表示され、これが答えとなる。

また、RIRから実質の現在価値PVやアニュイティ・年金PMTを出すには、上を参考にすれば簡単に算出される。小林先生のご本では数式を懇切丁寧に導出されているので、それを分かることが非常に大事ではあろうが、【TVM】メニューの操作だけ理解できれば基本的に問題はないと思う。私自身も操作することによって、小林先生のご本がどういうことを言っているか理解できるようになったのです。

連続複利による実効金利EFFと実質金利

年利率rの連続複利による実効金利は eのr乗-1であった。わたしたちは違った操作をして算出する。

1【ENTER】rの小数値【Δ%】で求める。

たとえば、名目金利が9%で、インフレ率が2%であったとしたら、

1. 0.02【g】【1/x】0.09【g】【1/x】【Δ%】で7.25082という数値が算出され、これが連続複利による実効金利であるので、

2. 1.0725082【g】【%T】を押すと0.07という数値が算出される。

ということで、連続複利の場合は

実質金利=名目金利-インフレ率

という簡単な関係式が成り立つ。

以上は、『ファイナンス数学の基礎』(小林道正著)を参照させて頂いております。

 

【n】キーにストアする『複利期間』

(複利期間の細分化)

(1) 年利率と月利率

年利率12%で1000000円を借入れたとき、3年後に返済する金額を計算。

1.  【PV】キーに1000000【CHS】、【i】キーに12、【n】キーに3をストアする。

2. 【FV】キーを押すと、答えが1404928と算出される。

これを毎月の複利計算という場合は、

3. 【g】【i】キーに12、【g】【n】キーに3をストアする。

4. 【FV】キーを押すと、答えが1430769と算出される。

毎月の複利にしたための増加額は、25841円となる。

(2) 実効年利率EFF(effective annual rate)

上記の1430769円の元利合計を年に1回の複利で借りたとした場合の、実質的な年利率を求めてみる。

5. 【n】キーに3をストアする。

6. 【i】キーを押すと、12.6825が算出され、これがEFFである。

もともとの年利率は12%であったが、毎月の複利計算をするために、実質的には12.68%の複利になっていることがわかる。

(連続複利と指数関数)

(1) 連続複利と自然対数の底 e

1万円を年利率1すなわち100%で運用する場合、半年ごとの複利計算では1年後の元利合計は

1. 【PV】キーに1【CHS】を、【n】キーに2を、【i】キーに50をストアする。

2. 【FV】キーを押すと、2.25

今度は毎月ごとの複利計算

3. 【g】【n】キーに1を、【g】【i】キーに100をストアする。

4. 【FV】キーを押すと、2.61304

今度は毎週ごとの複利計算

5. 【n】に52を、【i】に100【ENTER】52【÷】をストアする。

6. 【FV】キーを押すと、2.6926

今度は毎日ごとの複利計算

7. 【n】に365を、【i】に100【ENTER】365【÷】をストアする。

8. 【FV】キーを押すと、2.71457

次第に元利合計は増えてくるが、いくらでも大きくなるわけではない。

このように、回数を増やしていったとき近づいていく極限の値があり、それを自然対数の底あるいはネピアの数といっている。この eは金融電卓では、

1【g】【1/x】を押すと、2.7182818・・・と表示される。

(2)連続複利

一般に、元本Aを年利率rで連続複利計算をした場合、1年後の元利合計は

A×eのr乗で表される。

連続複利の場合の実効年利率EFFは、年利率0.08(8%)の場合は

1. 1【ENTER】、0.08【g】【1/x】を押してストアする。

2. 【Δ%】キーを押すと、8.32871が算出されて、これがEFFである。

また、元金Aを年利率rで連続複利計算をした場合、n年後の元利合計は

A×eのr×n乗で表される。

上記の5年後の元利合計は

3. 【i】キーを押すと、8.32871がストアされる。

4. 【n】キーに5を、1【CHS】【PV】を押してストアする。

5. 【FV】キーを押すと、1.49182が算出されて元本が1.49182倍になることがわかる。

(3)指数関数 eのrx乗

年利率rの連続複利計算をする場合、x年後の元利合計は元本の eのrx乗倍になることがわかった。

xが定まれば元利合計 eのrx乗が定まるこのような関数を指数関数という。

以上は『ファイナンス数学の基礎』(小林道正著)を参照しております。

 

【i】キーにストアする『金利』

金利は未来と現在を往復するタイムマシンの乗車賃」であるという考え方がまさに『TVM』なのでです。HP12C の【TVM】メニューには【n】キー、【i】キー、【PV】キー、【PMT】キー、【FV】キーがあるのは『TVM』を考えるためにあるのです。

ここでわたしたちは『お金の時間価値』を深く考えなければならない事例をご紹介しましょう。『物語で読み解くファイナンス入門』(森平爽一郎著)の中の第2章「時は金なり」の箇所に載っています。

住宅ローンの話で、あなたはいま三五歳で三〇〇〇万円のマンションを購入するため銀行からお金を借りたとします。マイホームを持てたわけです。ところが年あたりの金利が8%で年1回の返済なら、毎年三〇〇万円ずつ借金を返すとして約二一年かかる計算になります。

唐突に「銀行に支払う金額は、元本三〇〇〇万円と利子分一億二〇〇〇万円の合計、なんと一億五〇〇〇万円にもなるのです。」と書かれています。この説明としては、

自分のお金を毎年三〇〇万円ずつ年金利8%で増やしていけば、約二一年後に一億五〇〇〇万円相当のマンションを買うことができます。今のマンションは、タイムマシンに乗って二一年の未来に行き、マンションを現在に持ち帰ったことに等しいと考えるわけです。いま銀行から8%の金利で三〇〇〇万円を借りてマンションを買ったことは、こういう考えと等価だったのです。

8%の金利、あるいは一億二〇〇〇万円の金利分とは、この二一年間を即時に旅するためのタイムマシンの乗車賃なのです。したがって、金利は将来得られるサービスや財を、現在すぐに得たり消費したりするための費用です。

もう少し経済学の専門用語でいえば、金利とは現在の消費と将来の消費とから得られる満足を比較検討して、それを等しくするものなのです。

この説明がどうしても私は納得できなかったのですが、みなさんはどうですか?

実際は三〇〇万円×二一年で六三〇〇万円がわたしが銀行に返済する金額なのじゃないのか!とみなさんもお考えのことでしょう。1年でしたらそう問題にはならないでしょう。しかし、二一年ともなれば話は別です。膨大な時間価値が金利相当分として計算されなければなりません。六三〇〇万円では時間価値が表されていません。

『TVM』の概念はわたしたちが経済行動の判断基準を『金利』を仲介して『PV』と『FV』を等価でむすぶことによって提示してくれるのです。

お金と時間と金利は密接に結びついているのです。このことの理解がわたしたちには不足している点ではないでしょうか! じっくり考えてみたいものです。

以上の文章は『物語で読み解くファイナンス入門』(森平爽一郎著)を参照しています。

 

先物為替2

前回の例題①と同じ状態を考える。今回は1年先物のドルが92円であった場合はどうだろうか。

先物レートは理論値と比べて円高ドル安である。したがって、先物のドルを1ドル買建てる。現物のドルを借りる。1年後に買うドルで返済するので1ドルを6%で割引いた額を【TVM】キーで計算すると、以下のようになる。

1. 【FV】キーに割引かれる数値をストアする。ここでは1ドルだ。

2. 年と金利を各々、【n】【i】キーにストアする。ここでは1年と6%だ。

3. 最後に、【PV】【CHS】キーを押すと、0.9434という数値が算出された。

この0.9434ドルを借入れる。借りたドルを売って円を94.34円買い、2%で運用する。1年後に92円で1ドルを現引きする(決済する)。このドルは借入金の返済に充てる。そうすると、預金の満期金96.23円なのでネットで4.23円の儲け。

ここでのポイントは「現物のドルを借りて、そのドルをすぐに売って円を買う。」というアービトラージ(裁定取引)なところと、割引額の計算を【TVM】キーで済ますことです。例題のように1年だったら筆算でもやれますが、10年ともなれば、金融電卓に手助けしてもらいましょう!

因みに、前回は「円を借りてドルを買う。」でした。

先物価格は現物価格を金利で割引いた額なのでした。【TVM】キーを使いましょう!

以上、前回同様、『証券アナリストのための数学再入門』(金子誠一著)を参考にしています。

 

 

先物為替(為替の先物取引)

先物取引は、外国為替においてとくに重要である。日本の輸出入業者は為替変動リスクを為替の先物予約でカバーしている。

通貨の場合はドルの買建ては円の売建てであり、ドルの売建ては円の買建てであるので頭が混乱します。以下の具体例で考えてみましょう。

① 1ドル100円、1年物の円金利は2%、ドル金利は6%とする。1年先物のドルはいくらか。

「現物価格は先物価格を金利で割引いた額に等しい。」の原則を思い出してほしい。また、前日の記事にある、無裁定条件の先物理論値は為替変動率を金利として『TVM』メニューを使えば簡単に算出されます。では、やってみましょう。

ここで注意が必要なことは、上にも書きましたが、円を売ったことはドルを買ったことになりますので、どちらを基数にするかを考えます。ここでは円を基数にします。

1. 1.02【ENTER】1.06【Δ%】【i】を押して3.92という数値をストアする。

2. 1【n】100【FV】を押して割引いた額を出す準備をする。

3. 【PV】【CHS】を押して理論値96.23円が算出されました。

② ①と同じ状況で1年先物のドル・レートは100円であった。この時、どのような裁定取引が可能か

先物レートは理論値96.23円に比べてドル高円安、そこで、先物のドルを1ドル売建てる。1年後に売るためのドルをいま買う。1年間6%で運用するので、以下のドルだけ買えばよい。

1. 1【FV】6【i】1【n】を押してストアする。

2. 【PV】【CHS】を押すと、0.9434㌦が算出される。

このために必要な円、94.34円は金利2%で借入れる。1年後に1ドルを決済して100円を得る。円の元利合計96.23円(94.34×1.02)を返済するとネットで3.77円の儲けとなる。

以上は『証券アナリストのための数学再入門』(金子誠一著)を参考にしています。

 

 

外国為替レートと『TVM』

木村先生の『HP⒓cによるときめきひらめき金融数学』の最終章に掲載されている設例126を考えてみよう。「ドル建て債に投資すべきか、円建て債に投資すべきか。」

今から1年間、金利10%の1000㌦のドル建て債に投資するか、金利2%の円建て債に投資するかという問題なのだが、先生とは違った方法で考えてみたい。

以前、紹介した『ファイナンス数学の基礎』の小林道正先生の『数』はたくさんの具体的な量から抽象化された概念であるとみると、この問題で扱われている数は外延量と内包量に分けて区別しないと間違った演算をしてしまう危険がある。外延量では足し算や引き算は使える。内包量は掛け算や割り算に関係しているということだった。

1年、1000㌦は外延量、10%、2%は内包量である。また、この問題は為替レートを問う問題で内包量を考えなければならない。

1年後に1.1倍になるドルの価値と1.02倍になる円の価値が等しくなるにはどれだけ円の価値が変化しなくてはいけないかを演算するには割り算で対応することにすぐに気づくと思う。

ここで円に対する価値変化を見るのだから分母は1.02、分子が1.1だし、両者とも内包量なので割り算が意味のある数値である変化率(内包量)を導き出す。答えはHP12C の【Δ%】キーを使えば、一発に7.84%が出てきてしまう。

反対に、ドルの価値の変化をベースに計算すると、-7.27%になるのでドル安になる。

木村先生のステップ1からステップ4を踏んでいけば答えは導き出せるのだが、私としては違和感を感じた。みなさんも考えてみてください。

為替レートの問題は先物価格と現物価格の無裁定条件と同じで難しいように考えがちだが、『TVM』を知ってしまったわたしたちは先物価格を金利で割引いた額が現物価格に等しいという無裁定条件を考え出すことができる。

 

 

人の一生は時間の使い方で決まる!

この言葉は『経営トップが綴る毎日の言葉』の中の9月28日分として掲載されているものです。サンゲツの元社長日比賢昭氏の書かれた文章です。是非、お読みください。
「時は人間の消費しうるもののなかで、もっとも貴重なものです。時間ほど万人に平等なものはなく、能力のあるなしも、貧富の差も関係なく、一日は二十四時間という時間は等しく与えられます。そして、時間は蓄えることができず、過ぎ去った時間はお金で買うことも再び手に入れることもできません。

このような貴重な時間を形がなく目に見えないためか、無神経に無関心に過ごしている人が多いのに驚きます。時間を半分にしか使えない人もあれば、時間を二倍・三倍も有効に使っている人もあります。

また、時間を有効に使う人はお金の使い方も上手です。「お金はコツコツ貯めて大きく使え」といわれるように時間も全く同じです。そして価値ある仕事は充実した長い時間をかけなければ手にすることができません。

「ゆっくり歩けば遠くへ行ける」、この言葉は急がず、たゆまず高い目標を持って毎日を積み重ねていくことが最も大切であることを教えております。」」

私はこの言葉に会えて幸せな気持ちになりました。この時を大切にしたいと思いました。作者はもうお亡くなりになっておられました。

投資についての『TVM』

わたしたちが『TVM』のコンセプトと計算法を学ぶのはなぜでしょうか? それは、現在の投資と将来の利益を評価するからです。そのため、異なる時点間における価値を比較しなければなりません。金融の世界における取引の多くは、『TVM』に基礎をおいています。このコンセプトを理解することが『金融リテラシー』のセミナーでの中心課題であるべきだと私は考えます。

この概念は奥が深いです。私自身も長年にわたり勉強してきたのですが、新たな発見があり驚いています。だからこそ、HP12cが手放せません。使っているうちに理解が深化していくからだと思います。

私は金融電卓を使わず数式だけで、または6つの係数表で理解させるテキストを勉強させられたのですが、頭が悪いせいかどうしても腑に落ちませんでした。そうこうしているうちにCFP認定者になるためにはここの理解力よりはもっと多くの事柄を知らなければ合格はおぼつきません。

そういう時、2つのご本に私はめぐり逢いました。そのときの感動は今でも残っています。『物語で読み解くファイナンス入門』(森平爽一郎著)、『HP12cによるときめきひらめき金融数学』(木村弘之亮著)です。なかでも、木村先生にはメールで感想を述べたところ返事をいただき恐縮した記憶があります。前著は森平先生のアメリカでの大学時代に金融電卓が普通に使われていたことや帰国されて同じ電卓を探したが見つからなかったということ、後著では電卓開発者に問い合わせし、金融数学に電卓をどういう風に使いこなすのかをご紹介いただいています。

まさに、『TVM』の理解力こそがCFP認定者たるゆえんであるという信念は年を追うごとに強くなっていきました。

どうか、みなさんも諦めないで『TVM』の考え方を日本では理解できない土壌なのだという認識に立ち、金融電卓を手元に置いてチャレンジしてください。

最後に、後著の推薦のしおりに米田隆氏が書かれている言葉を紹介しよう。「新しい時代を生きるために必要となる知恵の礎の一つとなるのが『金融リテラシー』だ。」この言葉は2008年に書かれていますからだいぶ昔になりましたが、未だに金融環境は変わっていないことを危惧しているのは私一人だけでしょうか?

収益率の数学

(収益率)

収益の効率性を表すのに便利なように、投資額の1円当たりの収益を表す量を使う、これを収益率という。

一般に、時間的、空間的にひろがりを表す量を「外延量」という。重さ、体積、時間、金額、投資金額、収益、人口、資本金などは外延量である。2つの外延量A、Bがあるとき、「量Bの単位当たりの量A」を「内包量」という。速さ、利率、人口増加率、失業率などは内包量である。

2つの外延量から内包量を求める計算が「割り算」である。

収益率も内包量の1つであり、収益を投資額で割って得られる。投資額の単位当たりに対する収益を表す量である。

(内部収益率)

現在価値PVと将来価値FVの間を結ぶのは、利率や収益率である。はじめに利率や収益率が外から与えられて、それを用いてPVとFVの関係が規程される。

これに対して、現在価値と将来価値が定まっていて、その間の関係を規定する率が計算の上から求められる場合がある。この場合には現在価値は投資額となり、将来価値は将来もたらされる収入となる。このような場合の率はいわば内部から定まる収益率であり、これを「内部収益率IRR」という。これの算出には、【TVM】メニューに【f】【IRR】キーが用意されている。

投資額と将来もたらされるキャッシュフローが与えられたとき、どのくらいの利率で運用したことに相当するかという場合の利率にほかならない。

あるいは、コストと回収リターンの現在価値が等しくなるような割引率といってもよい。

さらには、予想収益の現在価値を供給価格に等しくするような割引率として、ケインズの「資本の限界効率」とも等しい概念である。

複利計算による債券の利回りは実はここでいう内部収益率にほかならない。

以上は、『ファイナンス数学の基礎』(小林道正著)を引用しております。

【TVM】メニューにはわたしたちがイメージしづらい内包量の概念(割り算という数学)を理解する手助けをしてくれるという機能があるのです。