ブラック・ショールズ理論の直観的な理解

もう一度、2016年に読んだ『経済数学の直観的方法(確率・統計編)』を読み直してみよう!

「確率・統計」を根本的に学び直すには上記の理論は絶好の題材で、恐らく文系理系を通じてこれ以上のものはないように思われると記載されています。長沼先生のこのご本は3年前に紹介させていただいたのですが、読み返すことによって今回、「気づき」があったので書かせていただきます。

ご本を読んでいただきますと分かりますが、結論は「利益は時間tに比例して拡大」ということなのです。このことは「常識」でしょうか、「非常識」でしょうか?

前回も書いたように、筆者は金融の話よりもっと大きな視点で、広い教養の話題として捉えるブラック・ショールズ理論の必要性を叫ばれています。私も感銘を得けたのですが、具体的にそれを実証する術はあるのでしょうか?

私の「気づき」というのは、このご本が出版された時期と呼応するするように、増田丞美氏の主催される「OCFC」という「オプション・キャッシュフロー・クラブ」に入会したのですが、この二つの事柄は全く関係がありませんでした。しかし、長沼先生が言っていることと増田氏が実践していることが日が経つにしたがって増々シンクロナイズドしていくように思うようになったのです。

誤解なさらないでほしいのですが、残念ながら私の成果は上がっていません。悪しからず。

これから何について学ぶべきか

「もし若者たちに「これから何について学ぶべきか」と問われたら、私は次の3つを挙げる。

語学、会計学、そして数学である。

とくに昨今、世の中は数学の中でも「統計学」に注目しつつあるようだ。」

という、前書きで始まるご本が出版された。『図解 統計学超入門』著者は私のブログに時々ご登場願う髙橋洋一先生です。

ご本の内容を「数字アレルギー保持者の筆頭格である、彼女のこの手の要望は毎度のことであり、これまで経済学や会計学についても同様の経緯で執筆してきた。」ということで、私たち初心者向けの「統計の初歩の初歩」と呼ぶべき入門書であると紹介されています。

面白いというより、「順列と組み合わせ」、「正規分布と二項分布の関係」、「中心極限定理」などの考え方が腑に落ちること請け合いです。是非、お読みください。

本文中の箇所を何か所か引用すると、

「数学の苦手な人ほど数式を見ると、「頭が痛くなりそう」だの「目が滑る」だのというが、そうして思考停止させてしまうから、何もわからないのである。」

「正規分布、二項分布、中心極限定理といった知識が身につくことで、世の中の見方が変わるのだ。見ているつもりで見えていなかったことに気づける、といったほうがいいかもしれない。」

「実際、私は大学で数学を専攻したが、数学の公式はほぼ覚えていない。ただ、どう考えればいいのか、どの方向へ向かえば解が導き出せるのかはわかっている。」

などの箇所が印象的だった。

最後に、「統計学とはどういうものか」に答えている文章を引用したい。

「つまり、全数調査をしなくとも、もっと少ないサンプルのデータだけで、限りなく全数調査の結果に近い数値を、割り出すことが出来る。これが統計学である。」

「わざわざお金と労力をかけてまで、膨大なデータを集めるのはムダなのだ。統計学がこのムダをきれいに解消してくれるわけである。」

「超」入門 微分積分

神永正博先生のご本をもう一度、じっくり読ませていただきましたが、副題の『学校では教えてくれない「考え方のコツ」』の通り、高校数学の肝である「微積分」考え方がスッキリ納得できる名著であると、改めて感じた次第です。

特に、ネイピア数「e」はどこから来たのかという問いに対して、こういうことだったんだ!と納得させられるところが、すっごく感銘を受けたところです。

『現代暗号入門』といい、『「超」入門 微分積分』を著して頂いて、先生には大変、感謝申し上げます。「有難うございました。」

私のような文系人には、高校数学を学び直すことによって、世の中の見えない世界を見える化することができるのではないかと思うのです。

この本には本当に「考え方のコツ」が凝縮されているように思います。2冊の必読書は世の中の見方を「REBORN」してくれました。

現代暗号入門

このテーマは『現代暗号入門』というご本の書籍名です。「いかにして秘密は守られるか」という副題がついています。著者は神永正博先生です。以前、『「超」入門微分積分』という本を読んでいたので同じ著者ということもあって興味がわき、読んでみました。

私がずーと、何だかわからないままでいたことを「常識」としていたことが「非常識」であることを気付かせていた頂き、有難うございました。スッキリ頭の中に入ってきたような感じを持てる本でした。前著の本の時の様でもあります。

「まえがき」を引用します。

「もともと暗号は、軍事的な通信を秘匿するために作られた。長い間、我々の生活とは無縁なものだったが、今や暗号なしには生活することは難しい。インターネットショッピング、携帯電話、WiFi、ICカードはもちろん、ビットコインを始めとする暗号通貨も、電子署名とハッシュ関数という暗号技術でできている。これほど暗号に依存しているにもかかわらず、技術の根本を理解し、最新技術に通じている者は驚くほど少ない。」

これを読んで、みなさんははっとしないだろうか? 私は、少なからず納得するものがあった。まったく、当たっている! これらのものが、暗号技術でできていることすら、理解していなかったのだ!

さあ、読んでみてください。「暗号」は面白い!

「現代的な「暗号」の基本要素は「共通鍵暗号」、「ハッシュ関数」、「公開鍵暗号」であり、これらを組み合わせて様々なシステムを構築する仕組みになっている。数式が全て理解できなくても現代暗号のエッセンスは、つかめるはずだ。高校2年生レベル以上の数学知識(微分積分はほぼ不要)があれば、十分に理解できるだろう。」

と、著者も言っておられる。勇気をもって、チャレンジしよう!

量子コンピュータ

現在のコンピュータのしくみはビット(binary digit)と論理回路で説明できることを前回に紹介しました。

コンピュータが行っていることは、たくさん並べられた「ビット」をさまざまに操作していくことにほかならない。この演算には、次の3つの要素が必要になる。

まず、ビットを読み込んだり、書き込んだりの動作をする「処理装置」だ。これは、計算機の頭脳に相当する。次が「レジスタ」で、これは処理装置がいったん内容を保存するために使うメモ帳のようなものである。最後が「メモリ」。ここは、データを2進数の形で蓄えておくところだ。

コンピュータの行う「演算」とは、そのビット列を別のビット列に、ある規則に従って変換する行為である。

そこで、量子コンピュータとは、これまでの計算機(スーパーコンピュータも含めて)が古典力学にのっとった「古典的な」計算機であるのに対して、「量子力学」を直接用いる、まったく新しい原理に基づく計算機である。

数学の因数分解などの問題は、桁数が増えるにつれて計算時間が爆発的の増えるので、スーパーコンピュータを使っても1000桁の数の因数分解は決して解けないのだが、量子コンピュータを使うと数分で解けてしまうのだ!

ただ、「片方の因数を知っている人」にとっては、因数分解の答えをあっという間に得られるという特徴がある。この特徴を利用した「公開鍵暗号」の仕組みは、現在インターネットをはじめ広く世の中でつかわれている。

以上の引用文は『量子コンピュータ』というご本のものです。著者は竹内繁樹先生です。

今後、量子コンピュータの出現によって、「公開鍵暗号」方式は使えなくなってしまうそうだ。

コンピュータの計算

コンピュータの演算の種類には、加算を始めとする四則演算のほかに、「判断」「予測」などのアルゴリズムを実行するために必要な論理演算というものがある。プログラム言語によって、条件式などが真である(正しい)が偽である(正しくない)か判断するために使われる演算です。

論理を計算に置き換えて、計算で論理を進めていくのです。「命題」は文章と思ってください。

AND(論理積)、OR(論理和)、XOR(排他的論理和)、NOT(否定)

論理演算は四則演算より簡単です。なんといっても繰り上がりがなく、演算の対象が1か0のいずれかです!!

この4種類の論理演算の記号を使えば、全ての論理を演算で表わすことが可能になるのです。したがって、コンピュータはこの4つの論理演算を物理的な電気回路で実現した論理回路を使って、計算できるように作られています。

実現されたときに使われていたのは、真空管やリレーといった大掛かりなものでした。現在のコンピュータを構成する電子回路は十数種類の基本部品から構成されていて、その中のもっとも重要なのは、1つ以上の入力から1つの出力を計算するこれらの論理回路です。

回路は入力の電圧または電流によって制御され、出力の電圧ないし、電流を生成します。

万能チューリング・マシンは論理回路によって実現されたのです。

コンピュータの計算というのが、このような理論に基づいているということを分かっていただければ嬉しいです。

以上は、『チューリングの計算理論入門』より引用。

コンピュータができる計算を明らかにしたこと(計算可能性)がチューリングの最大の功績なのだが、不可能な計算があるらしいのです。読者のみなさんもびっくり仰天でしょう! 是非、この続きはご本を手に取ってお読みください。

世の中は計算できるⅢ

数を使った計算は人間の営みです。数を使った計算とは何か。数という概念がなぜ必要になったのでしょうか? 一つには比較をする必要が考えられます。

また、人間は数をまとめて扱うことで、数え方の効率を上げました。0の概念を使う表記法「位取り記数法」を編み出しました。コンピュータが扱う数は0と1の2進法なのですが、数としてというよりは記号として扱っています。

四則演算やおつりの計算では行う手順があるということを考えてみる必要があります。人間が何かの条件で判断をするときには、「繰り返し」、「順番」、「ならば」という手順の基本的な構造を使うことによって行うことができるのです。

人間のあらゆる作業を「計算」として定義することができたのはこのことによってです。あらゆる作業とは、四則演算だけではなく、掃除や料理、通勤や通学といった日常の作業全てです。

このような作業を人間は毎日行っていますが、これを抽象的に表現してみますと、「ある状態のとき、外からの刺激によって判断を行い、次の状態へ移る」ということです。おつりの計算の構造と同じです。つまり、これも「計算」なのです。

「計算する」を英語に翻訳すると「calculate」という言葉になりますが、「判断する、予測する」という意味もあるのです。

「計算高い人」などの悪口は、人間が行う四則演算の計算高いで、何もそれだけではないのです。何か問題を解決するときにいろいろなことを考えて、手順通りに実行できる人という尊敬に値する場合もあるわけです。

以上は、前回に引き続き、『チューリングの計算理論入門』(高岡詠子著)を参照しております。

わたしの事務所の看板の「世の中は計算できる」とは、そういう意味で書かせていただいています。「calculate」できる人になるという目標を表明しています。

世の中は計算できるⅡ

『計算』とは『ある状態が外からの刺激によって変化して状態が変わること』と言うこともできます。『状態』とは『人や物事の、ある時点でのありさま』のことです。

「計算できるということはどういうことか?」「人間が計算をするときはどのようにするか」 人間を「いくつかの状態を取ることができる機械」に置き換えて、計算を考えた人がいました。

1948年 シャノンは『通信の数学的理論』という論文で、「あらゆる情報は数値に置き換えて表すことができる」ということを提唱しました。確率という側面から情報の量を定義し、それをもとにして情報理論という一つの分野を構築したということです。1937年、「A Symbolic Analysis of Relay and Switching Circuits」という修士論文で、計算機にブール代数を応用した初めての論文で、スイッチの開閉が、ちょうど記号論理の「真」と「偽」に対応することを示しました。その後、計算機の回路設計が2進法に基づくようになったのです。シャノンは情報の最小単位をこのスイッチのように2通りの情報で表せるものと定義し、binary digit,つまりビットと呼ぶことにしたのです。最近、話題の「ビットコイン」でおなじみですね!

情報科学で扱う「情報」は「情報」という言葉の持つ曖昧さをなくすために、このような数値で表すことにしたのです。

また、チューリングはチューリング・マシンを用いれば、人間の思考を代替できることを示したのですが、シャノンが電気回路でチューリング・マシン、つまりは現代のコンピュータを構築できることを示したのです。

そして、プログラム内蔵方式のコンピュータを「フォン・ノイマン型コンピュータ」と言います。プログラム内蔵方式とは、メインメモリにプログラムとデータを入れてCPUで実行する方式であり、計算手順自体をデータとして内部に取り込む計算システムのことです。プログラムとは、計算手順を記号化したものですが、これ自体もデータとして処理できるということを示しています。

以上は、『シャノンの情報理論入門』に記載されていたものを引用しています。著者は高岡詠子先生です。

『HP12C』という金融電卓には、高度な計算だけでなく、コンピュータ本来のプログラムを計算に活用できる仕組みもありますので、「計算手順の記号化」ということを身をもって実践できる優れものです。是非、手元に置いて使ってみましょう!

 

 

 

「貨幣経済が衰退する」

はじめに、この言葉がテーマになっている本を紹介しよう。『信用の新世紀』副題(ブロックチェーン後の未来)著者斎藤賢爾先生

この中に書かれていることは、わたしたちが今を疑いもなく生活をしている社会が急激に変化するだろうことをつらびやかに語られるものです。

どうして貨幣(マネー)の力は弱まると言えるのだろうか。そして、貨幣の力が弱まって、信用が本来の姿を現すとは、いったい、どんな意味なのだるうか?

第1章の「ブロックチェーンって何だ?」では、この技術は「分散台帳」と呼ばれることがあり、本質は「みんなで作る新聞」、「分散広告」とでも呼ぶべきものであり、ビットコインを実現するために発明された。ビットコインの誕生は「自分がもっているお金を自分が好きに送金することを誰にも止めさせないため」というものだったと考えられる。

第2章の「信用」の歴史では「仮想貨幣」ビットコインは、新しくもなんともないもので、実のところ、それこそが貨幣の原型。地金ではなく信用にもとづく貨幣のことであり、現在の銀行券などもその中に含まれる。まず信用貨幣のかたちで人類史に登場し、貨幣の始まりが負債だったのだとすれば、農耕のような計画性の導入が前提になったのではないか。国家と国民の関係、国家への借りの返済が「税」であって、現代の貨幣の起源がそこにあると説いている。

これ以上、とりとめのない引用文を紹介してもしょうがないので、この辺で辞めますが、最後に「信用の氷山モデル」の箇所は私の禁じ得ない驚きであったので留意しておきます。

 

「ヘリコプターマネー」

このちょっと聞きなれない言葉は、わたしたちの「常識」では不道徳なものと映るのだが、これは世界中で行われている由緒正しい経済政策の一つである。

2002年ベン・バーナンキが「中央銀行による国債の買い入れと減税の組み合わせはフリードマンのいうヘリコプターマネーと同じだ」と述べてから、俄然注目を集めるようになった。

それにしても、日銀が発行したお金を財源に政府が支出するようなマネをして大丈夫なのか。実際、日本では、多くの経済学者がヘリコプターマネーには否定的である。

こういう状況下、ヘリコプターマネーを主軸とした新たな貨幣制度を提案されているのが、『ヘリコプターマネー』というご本の著者、井上智洋先生なのだ。

「非常識」とも思えることを未来のための新しい制度を構想するとして主張されている書籍ですので、是非、お読みください!

そこでは、国民全員にお金を給付する包括的な社会保障制度である「ベーシックインカム」(BI)とともに、人工知能(AI)によって雇用が激減する未来の社会の正しい知見が発見されます。